過熱するメタバース。熱狂を生む2つの潮流とは?

Iryna Veklich/Getty Images


このように、いまトレンドとなっている新しいメタバースの多くは、私たちが生身で生活する現実世界との連動性が極めて高いという特徴をもつ。優劣の違いではなく、期待されていることや目指すものの違いから「メタバース2.0」と捉えることもできるだろう。

そんな「メタバース2.0」が盛り上がりを見せる背景を大まかに整理したものが、下の図だ。

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メタバース構築を目指す2つのベクトル

筆者は、いまメタバースが盛り上がっている背景には、2つの潮流があると考えている。

1つがフェイスブックに代表されるSNSから発展したもので、コミュニケーション手段の1つとして、メタバースを構築しようというものだ(図の左上から右上へのベクトル)。

スマートフォンの登場によって、私たちの生活とインターネットは不可分となった。さらにSNSの登場によって、私たちは日常的なコミュニケーションの大多数をデジタル空間上で行うようになった。

このコミュニケーションは、画面上のテキスト送受信に始まり、絵文字、スタンプ、ボイスメッセージ、ビデオ通話と段階を経て発展してきている。さらにこれをアバターによるコミュニケーションに発展させようというのがSNSの延長線にあるメタバース創出の動きだ。

もう1つの潮流は、従来のバーチャルな面白さを大切にしてきた既存のメタバース1.0やゲームから派生したものだ(図の右下から右上へのベクトル)。ここでは、デジタル世界でのゲームプレイや獲得アイテム、実績などを経済活動と結びつけるための舞台装置として、メタバースを再構築しようという動きが生まれている。

かつてよりオンラインゲームの領域ではユーザー同士の交流を通じ、仮想空間内のアイテムを現実の世界で売買するRMT(real money trade=リアルマネートレード)が行われてきた。

しかし、従来のRMTはデジタルに完結するものではなく、口約束に近い合意形成に依拠してデジタルデータの受け渡しを行うため、対価の不払いや詐欺が発生しやすく、規制の対象にもなった経緯がある。

こうした取引を、リアルな経済活動とシームレスに紐付けようというのが、ゲーム業界でメタバースを再創出しようとする動きだ。

なぜ、いまメタバースが盛り上がったのか


いまメタバースが急激に盛り上がっている理由の1つには、新型コロナウイルスの感染拡大が挙げられる。

オフライン経済圏の大部分が機能不全に陥ったことで、Zoomなどのオンラインコミュニケーションツールの普及率が急上昇したことは周知の事実だ。同時に多くの芸能人や有名人がYouTubeでの活動を開始し、ライブ動画配信者や「にじさんじ」などVtuberの存在感も増した。

コロナ禍により、従来アナログな体験や物品を販売してきた業界も、デジタル経済圏へ活路を見出している。特に消費から体験へとビジネスモデルを転換してきたエンタメ業界や需要が外出機会と直結するファッション業界の打撃は著しく、商品の販売経路をデジタル化するだけでなく、利用シーンや体験そのものをデジタル化する必要に迫られている。
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文=森川夢佑斗

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