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2021.12.08 07:30

「CVC新元年」だった2021年。さらなる拡大・飛躍へ向かう


「CVC新元年」の成長と期待

━━ グローバル・ブレインCEO/ゼネラルパートナー 百合本安彦

2021年は、我々のフラッグシップファンド(純投資ファンド)、CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)ファンドを通して、年間120~130件ペースで投資をしている。数多くの投資検討をしているなかで、起業家の質の高まりを感じる。印象論だが、メルカリの山田(進太郎)さん、ラクスル松本(恭攝)さん、ビジョナル南(壮一郎)さん、BASE鶴岡(裕太)さんレベルの起業家に1週間に1度は会っているイメージだ。

日本でも現在、ユニコーンの数は増えているが、米・英・仏・独・イスラエル・ブラジル・カナダといった世界全体とは「差」が開いている。日本が伸びているだけで喜んでいたら、「ガラパゴスのなかに閉じていた」という世界になるのではないか。海外の成長スピードが早すぎる。

米国でユニコーンが急増しているため、投資家側から見ると相対的に日本市場が魅力的に見えているいま、日本のエコシステムを強くしていかないといけない。日本もスタートアップのレベルが向上し、知見はたまってきているが、成長スピードが追いついていない。悲観論ではないが、これから右肩上がりの成長が続くとは思わないからこそ、なおのことだ。

21年を象徴する出来事は、米ペイパルによるPaidyの3000億円での買収だろう。上場直前のユニコーンを、海外事業会社が超大型M&A(合併・買収)をしたという世界の誕生だ。テンセントも日本で投資をしており、国内VC、事業会社だけの競争ではなく、海外投資家、事業会社参入による「群雄割拠」時代に入った。「VCが強かった」時期から、VCと起業家の関係性も変わるだろう。

また、CVCの存在感が強まっている。コロナ禍におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)推進の加速が、スタートアップとのオープンイノベーション推進への機運がさらに強まった。日経新聞の報道によれば、大企業のCVCによる複数年の投資枠が6104億円と言われている。すでにスタートアップ調達金額の半分以上を、大企業からの投資金額が占めていると思うが、さらに上回っていくだろう。

だからこそ今年を「CVC新元年」と呼んでいる。日本を代表するブルーチップ企業もCVCを検討しており、これからさらに伸びていくと思っている。今後は、Paidy買収のような事例も増えていくのではないか。海外企業からのスタートアップ買収がありえることが日本の大企業に認識されたという意味で影響力は大きく、CVC全体としてそうした動きに対応しなければならない。買収金額の桁がひとつあがったことも含め、スタートアップ側も大企業と組んで、市場をとっていくという認識ができたのではないか。(談)

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本連載は、発売中のForbes JAPAN2022年1月号の特集「起業家ランキング2022」と連動した企画です。今後、著名投資家へのインタビューを連載形式で随時公開を予定しています。

【連載】スタートアップ・トレンド
vol.1 2021年、「ギアチェンジ」した日本のスタートアップの進化
vol.2 2022年、スタートアップ資金調達額「1兆円」時代の到来か

文=Forbes JAPAN編集部

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