農業、健康、宇宙 世界経済フォーラムが選ぶ「2021年の新興テクノロジー10」

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バイオマーカーデバイスのワイヤレス化


注射が好きな人はいないでしょう。しかし、一般的な急性疾患や慢性疾患では、がん治療や糖尿病などの進行状況を把握するのに重要なバイオマーカーをモニターするために、大小様々な採血を頻繁に行う必要があります。こうした中、低消費電力の無線通信や、光と電子の両方の探針を用いた新しい化学検知技術の進歩により、重要な医療情報を継続的かつ非侵襲的にモニタリングすることが可能になっています。

100社以上の企業が、世界的に増加している糖尿病に焦点を当てながら、様々な用途の無線バイオマーカー・センシングデバイスを導入、または開発しています。ワイヤレス通信によって、離れた場所にいる医療従事者が必要に応じてデータを即座に入手することが可能になるのです。


ワイヤレス通信によってすぐにデータが得られます。イメージ: Getty/LPettet

現地の材料を使った3Dプリント住宅


大規模な3Dプリンターを使った住宅の建築は、米国やその他の先進国では、限定的ではあるもののすでに導入されています。一方で、インフラが整っていない開発途上国では材料の輸送が課題となりますが、3Dプリンターを使った最近の実証実験では、現地で調達した材料、粘土、砂、繊維を使用することで、建築現場への輸送が必要な材料のうち約95%を削減するという、飛躍的な進歩が見られました。

この新しい技術によって、住宅のニーズが切実でありながら、実行可能な輸送ネットワークのない遠隔地にも、頑丈なシェルターを提供できるようになります。その結果、これまで取り残されがちだった国々の状況を、大きく一変させるかもしれません。

宇宙が地球をつなぐ


IoTに搭載されたセンサーは、天候、土壌の状態、水分量、作物の健康状態、社会活動など、数え切れないほどの貴重なデータを記録し、報告することができます。最近では、地球の低軌道上に無数の低コストの超小型衛星が設置され、これらのデータを世界中で収集し、中央施設にダウンロードして処理することができるようになりました。その結果、IoTは、インターネットインフラがなく、これまでアクセスできなかった開発途上地域に至るまで、前例のないレベルで国際理解を可能にしていくでしょう。

安全なデータリンクの低消費電力化や、低軌道衛星の寿命の短さなどの課題は残っていますが、この技術は着実に進歩しており、今後3年から5年で世界的に普及することが期待されています。


宇宙衛星は、地球の状況をより深く理解するための可能性を秘めています。イメージ: Getty/Janicebros

(この記事は、世界経済フォーラムのAgendaから転載したものです)

連載:世界が直面する課題の解決方法
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文=Mariette DiChristina/ Dean, College of Communication Boston University、Bernard Meyerson/ Chief Innovation Officer IBM

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