ビジネス

2021.12.13

花のサブスク・ブルーミーが業界を刷新 「人に贈る」から「自分で飾る」へ

Crunch Style 代表取締役CEO 武井亮太


「花」の体験を変える


また、武井には、花業界が小さな市場を多くのプレーヤーで取り合っているように見え、「市場自体を活性化させないと業界自体がどんどん厳しくなっていく」と感じていた。

一般的に、人が花屋に足を運ぶのは、誕生日や同僚の退職など、祝い事のために花束を購入するときがほとんどだ。実際に花のニーズの8〜9割はプレゼントだという。

「このままECサービスを改良して小さな市場で競っていても、花の業界が伸びていくイメージが見えませんでした」

花の市場を拡げるためにはどうしたらいいか。人々の日常に花を取り入れてもらう方法を考えた結果、武井が辿り着いたサービスがブルーミーだった。

今では10万世帯以上が利用しているブルーミーだが、ユーザーの8割以上はこれまで花を飾る習慣がなかった人たちだという。ブルーミーは、これまでの「花はプレゼントするもの」という概念を覆し、「自分のために飾る」という新しいユーザー体験を生み出したのだ。

レガシー産業での挑戦




武井は、大学では教育学を学んでいた。子どものころに尊敬する教師と出会い、「自分も誰かに良い影響を与えられる存在になりたい」と、その道を志した。

しかし、大学時代にインターンをしたスタートアップ企業で、数人で作ったサービスが数万人の人たち使われていく様子を目の当たりにし、衝撃を受けた。教師になり、担当のクラスを持ち、20年、30年と仕事を続けることも魅力的だが、より多くの人に少しでも良いから感動を与えたいと思うようになった。

フィットネスやホットヨガなどの教室を多角的に経営するベンチャー企業に就職。その後、メンバーが3人のみの不動産系スタートアップに転職。2年間で組織や事業規模の急拡大を経験し、自らの起業を決意した。

多くの人にサービスを提供するために、あえてブルーオーシャンの領域を狙った。「IT化されていない領域の方が自分たちで広がりを作れるはず」と考えたのだ。起業後にビジネスアイデアを考える際は、「レガシー産業」をキーワードにした。

ライフスタイル領域の事業とは考えていたが、その時点では具体的なサービスは決まっていなかった。花に決めたのは、会社を辞めた時にもらった花束がきっかけだった。

「花束をもらったこと自体も嬉しかったですが、部屋に飾っておくと前職での経験が蘇ってきたんです」

花に花そのもの以上の価値を感じた武井は、花業界のリサーチを始めた。案の定、そこはIT化の進んでいないレガシーな産業だった。
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文・写真=入澤 諒

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