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2021.12.07 07:30

2022年、スタートアップ資金調達額「1兆円」時代の到来か

発売中のForbes JAPAN2022年1月号の特集「日本の起業家 BEST10」では、海外機関投資家からの資金流入をはじめ、続々とユニコーンが誕生するなど、ゲームチェンジさなかの「新たなフェーズ」に突入した日本のスタートアップ・エコシステムの全貌について掲載している。ウェブ版では「スタートアップ・トレンド」と称して、著名投資家20人以上へのインタビューを連載形式で掲載していく。

Vol.2では、グロービス・キャピタル・パートナーズ・代表パートナーの今野穣、インキュベイトファンド・セネラルパートナーの村田祐介へのインタビューを掲載する。(Vol.1はこちら)

「カテゴリーキラー」か、否か

━━ グロービス・キャピタル・パートナーズ・代表パートナー 今野穣

2020年に大きな変化、21年はさらに大きな変化が起きた。20年は、スタートアップの事業、ビジネス、エコシステムにとってコロナ禍が「追い風」になった。必然的にDX(デジタルトランスフォーメーション)化、デジタル化をせざるをえない環境になり、進化が早まったからだ。それを見て注目度が上がり、グロースファンドを中心に、政府系ファンド、上場株も扱うクロスオーバーファンドからの資金流入が増えた。

21年はそれに加え、各ラウンドの調達が、大型化した。13〜14年時点と比較すると、3〜5倍になっている。シリーズAラウンドが5〜10億円、同Bラウンドが10〜30億円、同Cラウンドが30〜50億円規模と、全ラウンドで調達金額が増加している。大型調達できる企業と、できない企業の二極化が進んでいくだろう。

SmartHR、キャディ、アンドパッド、スマートニュースのような「カテゴリーキラー」には大型の資金が集まる。カテゴリーキラーであれば、「いま」ではなく「将来」の企業価値に着目すれば、現在の評価額のギャップは小さくなるため、資金調達がしやすくなる。一方、そう見えない企業は、シリーズCラウンド以降のセレクションが厳しくなる。

エコシステム全体としてポジティブなのは、ビジョナルの2491億円IPO(新規株式公開、上場初日終値)米ペイパルによるPaidyの3000億円M&A(合併・買収)だ。上場時でのユニコーン超えは久しぶりで、超大型M&Aはエポックメーキングだ。こうした事例が増加すると、投資家側の思考も「この規模に成長するだろう」と変わり、シリーズA、B、Cラウンドに対する寛容度はあがっていく。

今後については「多産多死」の米国型に近づいていくだろう。起業が旺盛になり、事業テーマも拡大し、資金も流入されているが、おそらく「突き抜ける」企業にお金がよっていく。次に起きることは、M&Aの増加だ。カテゴリーキラーはオーガニックな成長に加えて、多くの資金を集めて、M&Aをしていくケースが増えていくだろう。時間軸で言うと、少なくとも大型調達したスタートアップの買い意欲は「レディ」だ。

資金調達環境については、日本がよくなったというよりは、米国の加熱により、日本が割安と見られているからだろう。実態として、実力があがったとまでは言い切れない。マクロ環境に左右されるため、景気の上下による膨張収縮はあるだろうが、資金の割り当てのなかで、スタートアップ、テクノロジーというのは景気変動に左右されにくいのではないか。バイアウト市場が年間1兆円と言われているが、スタートアップも同規模になっていないとおかしい。(談)
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文=Forbes JAPAN編集部

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