堀内:あと、マネージしなければいけないのは、自分のまわりに本当のコミュニティをつくることですね。いわゆるヤンキーと呼ばれる人たちが強いのは、なんらか、人と助け合いのコミュニティをつくって生きているからです。それに対して、大企業では立場で関係性を築く。しかし、そんな人生には何の意味もないことにやがて気づくことになります。大企業的な世界に入らなかった人たちのほうが、地場でしっかり人間関係を築いていますよ。
冨山:小学校の同窓会なんかあると、最も元気でハッピーそうなのは、マイルドヤンキーたちだもん。僕もライフスタイルはややマイルドヤンキーなんですけど(笑)。
堀内:まったくその通り。冨山さんはマイルドヤンキーだ、という結論も含めて(笑)。
冨山:人とのかかわりでいえば、僕のポリシーは「貸し越し」状態にすることなんです。返してもらう必要はまったくないんですが、常に、貸しが多い状態にしておく。
その理由はシンプルで、そのほうがハッピーに生きられるから。利他論ではなく、そのほうが愉快だからです。気分よく人生が送れる。そして、世の中のためにもなる。自由主義社会なんですから、そのために限られた時間とお金をどう使うかを考えたほうがいい。
堀内:借り越す人もいるけど、貸し借りが残っているということは、そこには人間関係も残っているということ。それ自体が価値なんです。
冨山:年を取ると、借りにくるヤツも可愛いから(笑)。貸せる喜びもある。その意味では、貸しと借りは、時としてひっくり返りますよね。同じことの表裏。ただし、自分になにがしかのものがないと、どちらにもなれない。そうなるためのいろんな投資をこそ、若いときにやっておいたほうがいい。その回収が、年を取ってから始まるんです。
冨山和彦◎経営共創基盤(IGPI)グループ会長、日本共創プラットフォーム(JPiX)代表取締役社長。1960年生まれ。東京大学法学部卒業、スタンフォード大学経営学修士(MBA)。ボストンコンサルティンググループ、コーポレイトディレクション代表取締役を経て、産業再生機構COOに就任。07年に解散後、IGPI 設立。
堀内 勉◎多摩大学社会的投資研究所教授・副所長。1960年生まれ。東京大学法学部卒業、ハーバード大学法律大学院修了、日本興業銀行、ゴールドマンサックスを経て、2015年まで森ビル取締役専務執行役員CFO。多様な分野の学者やビジネスパーソンと「資本主義研究会」を主催する。