ビジネス

2021.12.07 08:00

組織の変革なんて待つな。個人が強くなるための「投資思考」




多摩大学社会的投資研究所教授・副所長 堀内 勉

堀内:古典を読むと、この2500年くらい、人間はほとんど変わっていないですよね。喜び、幸せ、悩みはまったく同じ。座右の書にマルクス・アウレーリウスの『自省録』がありますが、書いてあることは現代にまったく通じます。そして、長く読み継がれてきたということは、みんなに読んでおくべきだと判断されたということ。つまり、真実が含まれている蓋然性が高い。

冨山:古典には力があって、時間と空間を超えた人間の業、苦悩、煩悩、悲しみ、喜びが掘り下げられていますよね。一方で、僕は現代の人も知りたい。だから、はやりのドラマも見るし、コミックも読むし、映画も観ます。一人の人間として、できるだけ多様な経験をしたほうがいいんですよ。特に、日本の社会は同質的で閉鎖的ですから。

堀内:予定調和的ですね。サラリーマン社会では、立場が偉いと、その人の考え方まで偉くなってしまう。メチャクチャなことを言っているけど、偉い人だからきっと正しいんだろう、となる。恥をかかせないように、とごまかしてしまう。そういうロジックが平気で通る。忖度(そんたく)の極地です。それは、自分もいずれ上に行けると思っているから。もう順番は回ってこないとわかったら、バカらしくてやらないでしょう。

時間への意識が投資思考の入り口


冨山:振り返れば、バブル崩壊後の金融危機は、日本経済がダメになっていく序章でした。それほど構造問題は極めて根深い。いまは、それこそ殺し合いは起きていないけど、江戸時代から明治時代になるくらいの大革命期。世界のパラダイムは、そのくらい変わっている。中間管理職は10分の1くらいの数になるかもしれない。もはや短期的な経験なんて役に立たないのです。歴史から学ぶべきですね。時代が変わるとはどういうことか、理解したほうがいい。そして時間には限りがあるということも。

堀内:時間の有限性は、強く意識する必要がある。お金や自由が手に入ったとしても、絶対に人間がコントロールできないのが時間ですから。それこそ、一瞬一瞬をまじめに考えれば、会社飲み会、接待ゴルフ、麻雀ばかりやっている場合ではないことにも気づける。人生のプライオリティが大幅に変わる。自分は何をしないといけないのか、その都度、考えるようになる。時間は取り戻せないんです。しっかりマネージしないといけない。

冨山:時間の投資対価は、圧倒的に若いときのほうが高いことも知るべきですね。逆に考えるべきではないのは、若い時期の報酬です。そんなものは気にしてはいけない。まったくマーケットエフィエンシーじゃないから。そんなことより、どうすれば世の中の役に立てる人間になれるかを考えたほうがいい。
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文=上阪 徹 写真=桑嶋 維(怪物制作所)

この記事は 「Forbes JAPAN No.086 2021年10月号(2021/8/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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