ビジネス

2021.12.06 16:30

固定概念を柔らかく変える、新ルール「バリアブル」とは


元々、可変的なロゴ、というものはありました。有名なのは、テレビ朝日のビジュアルアイデンティティ(VI)。それらのジャンルは「ダイナミックアイデンティティ」と呼ばれ、一定のルールで無限(に近い)のバリエーションを生み出すスタイルのロゴマークです。

その佇まい自体に意義がある表現ですが、実用においては、あまりに選択肢が多いとユーザーにとってはどう接していいか……と、かえって悩ませるシーンもあるかもしれません。

一方、バリアブルは、ある程度の範囲のなかで、ユーザー自身が無理なく選んで着こなせる「ユニバーサルに扱える実用的な自由」だと思います。どんなユーザーにとっても快適に選ばせるために、決して足かせにならない心地よいガイドラインを設定しているのです。

この「バリアブル」という優しいルールは、ロゴ以外の分野でも応用できる可能性があります。

バリアブル○○の応用性


例えば、「バリアブル名刺」があったなら。場面にあわせて肩書を書き換えるだけで、言葉遣いや振る舞い方が切り替わって、いつもと違う成果が得られるかもしれません。

他にも、「バリアブル子供服」。針も糸も使わず簡単にサイズ調整ができることで、1年でぐんと成長する子供たちでも長く着続けられる服、というものが最近いくつかのブランドから発信されています。家計にも嬉しく、さらにサステナブルな行動を無理なく生活に取り入れられるのが魅力的です。

また、バリアブルな食生活なら、すでにある言葉で「フレキシタリアン」(=好きなときだけベジタリアン)というようなスタイルもあるそうです。無理なく習慣化するためのライトな入り口として、白黒でもないグラデーションをつくってあげる素敵なネーミングですね。

バリアブル法律、バリアブル教科書、バリアブル制服、バリアブル戸籍、バリアブル伝統工芸……。このように、既存の言葉と組み合わせるだけで、何だか面白そうな想像をさせてくれます。特に、いままで変わることがタブーであった画一的なモチーフこそ、バリアブルになったときの発見があります。

あなたの身の周りにも、一見カタそうだけど変化したら面白そうな原石はありませんか?

これはこうあるべきだ、という世の中の枠組みにとらわれず、思い切ってグラデーションを楽しめる入れ物をつくってあげる。そういう視点をもてば、いままでになかった新しいサービスやシステムも思いつくかもしれません。バリアブルロゴが教えてくれる、変化することを前提としたルールが、ますますやわらかくて優しい社会をつくってくれる気がします。


電通Bチーム◎2014年に秘密裏に始まった知る人ぞ知るクリエーティブチーム。社内外の特任リサーチャー50人が自分のB面を活用し、1人1ジャンルを常にリサーチ。社会を変える各種プロジェクトのみを支援している。平均年齢36歳。合言葉は「好奇心ファースト」。

一森加奈子◎電通Bチーム「タイポグラフィ」担当。A面はアートディレクター。文字を扱った作品づくりを得意とする。Instagram @1mori_k

本連載で発表しているすべてのコンセプトは、実際にビジネスに取り入れられるよう、講演や研修、ワークショップとしても提供しています。ご興味ある企業の方は、Forbes JAPAN編集部までお問い合わせください。

文=一森加奈子

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