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2021.12.06

東南アジア1兆ドル経済圏を狙う「グラブ」の米ナスダック上場

共同創業者のアンソニー・タンとタン・フイリン (c) Grab

東南アジアの配車アプリ「Grab」を運営するグラブ・ホールディングスは12月2日、米ナスダック市場に上場した。同社は特別目的買収会社(SPAC)との合併を経て上場を果たしたが、株価はふるわず前日比21%安で初日の取引を終えた。

SPACのアルティメーター・グロースとの合併に際し、第三者割当増資分を合わせた新会社の価値は約400億ドルとされたが、アナリストからは、赤字の会社がなぜこれほどまでに高く評価されるのかを疑問視する声もあがっていた。調査企業United First PartnersのアナリストのJustin Tangは、グラブの評価額が、東南アジアでのデジタルの導入が急速に進むという仮定に基づいたものだったと述べた。

グラブの株価は初値で13.06ドルをつけたが、21%急落して8.75ドルで取引終了時刻を迎えた。終値ベースの時価総額は346億ドル(約3.9兆円)だった。

グラブは、ハーバード大経営大学院の同級生だったアンソニー・タンと、タン・フイリンが2012年にマレーシアで立ち上げた企業だ。当初はタクシー予約アプリとして始まった同社は、配車サービスやフードデリバリー、金融サービスなどに事業を拡大してスーパーアプリに成長した。しかし、ここ数年の急速な事業拡大にもかかわらず、グラブは赤字に陥っている。

シンガポールに本社を置くグラブは先月、第3四半期の純損失が前年同期の6億2100万ドルから9億8800万ドルに拡大したと発表した。これは、例外的な費用が発生したことと、東南アジアの特にベトナムでパンデミックが再燃したことにより、配車部門が落ち込んだことが原因だった。

しかし、カンボジア、インドネシア、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナムの400以上の都市で事業を展開している同社には、巨大なポテンシャルがあると考えるアナリストもいる。

調査会社Tellimerのリサーチ部門のNirgunan Tiruchelvamは、グラブのナスダック市場へのデビューに先立ち、「今回の上場は、東南アジアの配車サービスとフードデリバリーの巨人であるグラブの機会の規模を拡大する」と述べていた。

1兆ドルのデジタル経済圏


グーグルとテマセク、ベインキャピタルが11月に合同で発表した調査結果によると、東南アジアは世界で最も急速に成長している地域の一つであり、今年のデジタルエコノミーのGMV(流通取引総額)は、前年比49%増の1740億ドルに達する見通しという。さらに、2025年までに3630億ドルに成長し、2030年には1兆ドルを超えると予測されている。

グラブは、2日の夜にシンガポールでナスダック上場を祝い、約200名のスタッフ、ドライバー、加盟店パートナーが参加した祝賀イベントを開催した。グラブのCEOのアンソニー・タンは、「私たちは今日、世界の人々の目を東南アジアに向け、この地域の6億6000万人の人々に新しい可能性をもたらしているテクノロジー企業の存在を知らせた」と述べた。

編集=上田裕資

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