「臨機応変」がすべて
海外にいる最中に状況と政府の対応ががらりと変化し、さらには一日単位で異なる情報が行きかう今回の経験で感じたのは、短い時間の中でも検査や隔離機関に関して可能な限り情報収集を行い、仕事などの優先事項を考慮しながらも迅速に判断し、臨機応変に対応する重要性だった。
さらに、変更に対応できる余裕も必要だ。コロナ前は格安航空券を好んで利用していた筆者だが、格安航空券の場合、変更やキャンセルに制限がついていることが多く、万が一の事態に対処しづらいため、今回筆者は航空会社から直接購入した。
また、状況がいつどう変わるかは予測不可能なため、滞在が伸びることも考え、予想外の出費についても心づもりはしていた。
筆者の場合は幸いにも、航空券をキャンセルすることなく、予定以上の滞在に費用がかかることもなかった。コロナ前の旅行と比べて余計にかかったものとしては、英国入国後2日目に行った検査費用(68ポンド)、出国72時間前に行ったPCR検査(99ポンド)、検疫所が確保する施設で食べるためにロンドンで買った日本の食品やコーヒー、お茶(40ポンド程度)、施設で過ごす中、普段は頼まないデリバリーサービスに頼ったこと(1食2000円程度)。
また、振り返ること11月29日、国土交通省は日本に到着する国際線の新規予約受け付けを12月末まで停止するよう国内外の航空会社に要請した。
政府はその1日後にこれを撤回し、12月3日から邦人による航空券の新規予約の受付が一部航空会社で再開した。このわずか1日の間だが、新規予約受付停止期間中、帰国便はすでに予約済みの筆者も、もし仮に予約済みの便がキャンセルされ、新規予約ができないとしたら、年内は日本に帰るめどが立たないことになる……、という不安に駆られる時間を過ごした。
日本は二重国籍を認めていない国で、海外に短期、長期によらず滞在している邦人が自国に帰る手段を断ち切られることは、滞在国でのビザが切れるなどの場合、不法滞在を余儀なくされることも考えられる。また、年内の便を予約できないということは、お正月を家族で迎えたい人もそれがかなわないことを意味することから、海外在住の邦人や日本に定住している外国人などを中心に大きな非難の声が上がったのは記憶に新しい(12月5日現在、在住資格のない外国人の入国はできない)。
到着後の空港での長い待ち時間の中で隣り合った人と短いながら話す機会があったが、米国・カリフォルニア州から帰国したという人は今回の変更を知らずに飛行機に乗り、迎えの車が羽田空港で待っていると話しており、3日間(過去14日間滞在していた国によって施設での待機日数は異なる)検疫所施設で待機しなければならないことに困惑していた。
施設での待機中は、待機機関が6日間の場合3日目と6日目にPCR検査があり、結果が陰性の場合退所して自主待機の場所へ移動することになる。この場合、ホテルでの直接解散は不可で、いったん羽田空港に戻ることになる。自家用車などで迎えに来てもらったり、ハイヤーをあらかじめ手配しておいたりするなど、公共交通機関(電車、タクシーなど)を使わずに待機場所まで移動することが求められる。また、羽田空港から川崎や品川方面に向かう周回バスも利用できる。筆者は品川駅まで家族に迎えに来てもらって、自宅待機に入る予定だ。
参考:着陸から検疫所のホテルへ移動するまでの時系列レポート
関連(後編)記事>>「4つの日課」。英国から帰国した強制隔離者「出所」までの手記 に続く
高以良潤子◎ライター、翻訳者、ジャーナリスト。シンガポールでの通信社記者経験、世界のビジネスリーダーへの取材実績あり。2015年よりAmazon勤務、プログラムマネジャーとして、31カ国語で展開するウェブサイトの言語品質を統括するなど活躍。2022年より米国系大手エンタメ企業勤務。