ビジネス

2021.12.06

日本流DXを実現するMagic Moment、CEOが語る「花鳥風月Model経営」とは

Magic Moment CEOの村尾祐弥氏


──景気、経済はバックグランドに人の感情があり、その組み合わせでできあがるものだと考えますが、人と人との交わりの中で生まれ得るものをどのように見ていますか?

Googleの時、日本法人から色々な施策をグローバルに展開できたのがとても良い経験でした。それは、日本独特の「うつろい」などの日本的発想をオペレーションにするということだったのです。

「うつろう」という言葉は日本にしかないそうです。よく言うのは「満開を5時間後に迎える桜」と「満開から5時間後の桜」はほとんど見た目が変わらない。でも同じ桜でも意味合いが違います。5時間後にこのシーズン最高の時を迎える桜と、旬が過ぎ去った桜では意味が違います。

人間もそうだと思うんです。例えば誰かと対人関係があって、これから関係性が盛り上がっていく時と、冷めていく時の座標がどこか同じ時もあるかと思うのです。X、Y軸として、Yは変わらないかもしれないのですが、Xという時間は流れていき、うつろっていくはずなんです。

その「うつろい」を表現したい。心の揺らぎを察知して、ベストアクションを提案する。お客様の利用頻度が高ければもっとサポートしたいと思うし、不満を抱えているシグナルが出ていたら、何かお手伝いできることはないか、伝えるべき何かを伝えていなかったか、といったことがあるはずなのです。それで弊社のミッションは、「強い絆で社会を繋ぐ」なのです。

──「うつろい」を体現するとはこれまでのOSにはなかなかない、日本的な発想です。

僕の好きな本に松岡正剛さんの『花鳥風月の科学』があります。その中に「時」という章があって、そこに四季に象徴されるような時の移行としての「うつろい」という表現は日本独特なものとあるのです。

インドでは、時間は動的なものとは捉えられていなかったり、英語も時間の内面的な表現は得意ではない。日本人の精神性の部分だと思うんですが、このうつろいを捉えることができたら日本にフィットするものができるかと考えました。

──村尾さんは、不定形な価値観に基づく第三の視点を持ち、それを体現できている珍しい経営者のようにお見受けします。

今、大企業の方々と話すと、自信がないと感じている方が多いです。Googleにいた頃、日本の地位がどんどん低下していくのを実感したことがあります。アジアの中で日本だけはリージョンだったのが、入社後にはJPAC(ジャパンおよびアジアパシフィック)、1年後にはAPAC(アジアパシフィック)の一国となってしまって。売り上げも、他国は増えていくのにデジタイズが遅れて劣後してきたなかで、日本式のやり方をグローバルに展開できるものを持ってる人はあまりいなかったのです。
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インタビュー:加藤倫子、谷本有香 文=加藤倫子

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