起業家の唯一の武器は「ビジョン」
──野口さんが考える、「起業家にとって重要な素養」を3つ挙げるとするとなんでしょうか?
1つめは「ビジョン」だと思います。
「鶏が先か、卵が先か」とよく問われますが、起業は起業家の「ビジョン」からすべてが始まります。仲間や資金、プロダクトというものは全て後からついてくるものなのです。
私はこのビジョンを大きく2つの軸でとらえています。「世の中のネガティブ要素を解決してニュートラルにする」、もしくは「ニュートラルな要素をポジティブにする」という軸です。
どちらの軸でも良いので、実現したい未来とプロセスを一言で語る「ビジョン」を持つ。これが何も持たない起業家の唯一の武器であり、唯一の差別化要素だと思います。
2つめの素養が「メタ化する力」です。
メタ化する力とは、物事を抽象化して理解する力のことです。
例えば我々の場合「世界売上No.1のブランドを作る」と公言しているので、ブランドシェアNo.1を獲ることを至上命題としてマーケティング活動に取り組んでいます。
私自身、デジタルマーケティングには創業以来かなり細かいディレクションの部分にまでコミットしてきましたが、そればかりやっているとデジタルマーケティングの最適化に視野が狭まってしまいがちです。
しかし現場に入り込んで経験した細かい内容の本質を捉え、「メタ化する」ことができれば、他の経営課題に生かすことができるでしょう。この物事を抽象化して理解する力は会社経営する上では不可欠な力です。
──「メタ化する力」を身につけるために、野口さんが普段意識されていることがあったらお聞かせください。
私は少し独特なのですが、一つの現象を「文章」「数学」「図形」の3つの視点に分解して理解することで、「メタ化する」ようにしています。
例えばデジタルマーケティングって「数学」が非常に重要ですよね。インプレッション数に対してのサイト流入数、購入数とファネルを1つずつ進んでいき、その間のコンバージョン率を改善していくことが鍵になります。
このようにデジタルマーケティングを、数学を用いて「メタ化」すると、例えば採用活動も原理原則が全く同じ構造であることに気づくことができます。
採用サイトに来て、その中で具体的に興味を持ち、面接まで来てくれる方が何人いるか。デジタルマーケティングと同じファネル(商品を認知した顧客が、比較検討や購買に至るにつれて少なくなっていくこと)を設定することができるのです。
このように何事も「文章」「数学」「図形」の視点で分解して理解し、その要素を他の分野に活かしていく。これが、私が「メタ化する力」を磨く上で意識していることです。