森岡 弘(以下、森岡):今月は「ストラスブルゴ」です。日本を代表するセレクトショップで、1990年の創業です。
小暮昌弘(以下、小暮):昔からよく存じております。HPを拝見すると「シンボルマークに依存することなく、ものづくりの本質を見極めること」とあります。イタリアを中心にした一級品のドレスクロージングと、ビジネスマンのオフにも似合う上質なカジュアルウェアまで揃えたショップですね。
森岡:ショップにはよく行きますが、ブランド自体はほかのセレクトショップにもあるものがセレクトされています。ただラインナップされているアイテムがほかのショップとは違っています。ちょっと艶感があるもの、いやらしくない範囲ですが、毒気のある洒落たものが揃っていると思います。
小暮:確か「ストラスブルゴ」は、大阪に出自をもつセレクトショップでしたね。
森岡:服好きの男性が、普通のものでは少しだけ物足りなくて、もうひとつアクセントを入れたいと思ったときに、選びそうな、ニュアンスがあるものを多く取り揃えています。
小暮:今回のジャケットはイタリアの「タリアトーレ」の製品ですね。プーリア州で1960年に創業のレラリオ社の2代目、ピノ・レラリオが立ち上げたブランド。ブランド名は「裁断士」という意味です。イタリアらしい職人気質とシャープなシルエットが特徴で、最近、日本でも人気のブランドです。
森岡:これもさまざまなセレクトショップで扱われていますが、ほかでは秋冬だとウール素材のオーソドックスなジャケットが並ぶことが多いと思います。ところが「ストラスブルゴ」は、ブラックのスエード素材のものまでも仕入れています。
小暮:こういうところに森岡さんは“艶感”とかいい意味での“毒気”を感じるのですね.
森岡:その通りです。
小暮:昔、イタリアの地方都市をいろいろと取材して回りました。小さな街でも必ず一軒ぐらいは洒落たものを独自の視点で集めているメンズショップがあって、そこに街中のお洒落な人が集まってくるのです。イタリアのファッションの底力を感じました。「ストラスブルゴ」のショップに入ったとき、私はそんなイタリアのメンズショップのにおいを感じました。
森岡:確かにそうかもしれません。もの選びにショップの個性というか、目指すべきスタイルが感じられるということですね。
小暮:そうです。