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2014.10.08

北京語は「世界の共通語」になりえない




英語が世界における共通語になったのは、歴史の結果である。大英帝国が、英語を世界中に広めた。それに続いてアメリカの経済的優位と政治的リーダーシップにより、英語は今日多くの国々で、第1または第2の言語になったのである。中国の標準語である北京語が、英語に代わって、世界で最も重要な言語になることはまったく考えられない。中国人は、歴史的に植民地をつくってこなかったので、英国、フランス、スペインの旧植民地が現在でも これらの国の言葉を話すのとは異なり、遠く離れた旧中国植民地で、北京語を話すような所はない。いずれにせよ、北京語は、ほかの国の人々にとっては、学んで習得するのが非常に難しい言語である。(中略)

 中国が東シナ海のほとんどを防空識別圏(ADIZ)としたのは、近隣の地域的環境を確定する必要が生じたためである。また、それは、尖閣/(日本では)魚釣島などの領有権が争われている地域も入っており、日本がすでに設定していたADIZと重なっている。これによって、民間機が重複するゾーンを飛んでいるときに、異なる管制当局から、相矛盾する指示が出される可能性がある。基本的に、ADIZは、すべての海と空の空間についての航行の自由を妨げるものであってはならない。それが変わるとは思えない。しかしながら、たとえ、2国間交渉が不調に終わった場合に、武力による衝突よりも、仲裁や裁定のほうが望ましいとしても、中国のような大国が、国際司法裁判所による決定に従うとは考えられない。

 中国は13億(アメリカは3億)の人口を抱え、経済が成長しているので、21世紀中に、中国がアメリカのGDPを追い抜くのは必然である。アメリカには、アジアに多くの友好国や同盟国があるが、地域における中国の権益と影響が大きくなりつつあることに留意することが必要である。中国企業が国際化するにしたがい、中国は海外に投資するようになった。これは、鉱物その他の天然資源へのアクセスが必要だからである。したがって、アメリカは、アジアとの関係を強化することが重要である。オバマ政権によるアジアへの「リバランシング」によって、正しい方向に向けて第一歩が踏み出されたが、長期にわたって続けられなければならない。

リー・クアン・ユー

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