主な販売チャネルは、マスターピースのECサイトと直営店(国内19店舗、台湾4店舗)、城崎温泉の一部の土産物店だ。そのほか、マスターピースと取引のある海外のセレクトショップでも少し取り扱いがある。10月29日に発売したところ、そのデザイン性の高さとコンセプトのユニークさで注目され、約1カ月で1200個がほぼ完売となった。
「ファッションブランド以外とのコラボは稀なのですが、城崎温泉の皆さんとお話をしていくうちに、温泉街もひとつのブランドなんだと実感しました。結果的に、バッグブランドであるマスターピースと、“歴史のある温泉街”として有名な城崎温泉のブランドイメージをうまく融合させることができたかなと思います」(古家)
「城崎温泉」と「カバンの街」を同時にPR
実は、城崎温泉のある豊岡市は、カバンの出荷額全国1位の「カバンの街」でもある。同市のブランド「豊岡鞄」に認定されるには、厳しい審査に合格する必要がある。
ただ、これまで「城崎温泉」と「カバンの街」を連携してPRすることはあまりなかったと、同市環境経済部 大交流課の和田真由美はいう。
「豊岡市は観光産業に支えられている街です。私が所属する“大交流課”では、城崎温泉の“観光”と地元の産業との連携を進めて、観光客が地域の人と交流していただけるような機会を増やそうと働きかけてきました。今回のプロジェクトはその流れに沿った象徴的なモデルケースなので、市でもバッグアップしています」
市では国内外に向けてプロジェクトに関するプレスリリースを発信するなど、PR面でサポートしている。
和田はさらに、「城崎温泉は、30〜40代の若い世代が先頭に立ってまちを盛り上げようと尽力しています。新しい価値観がどんどん生まれているからこそ、若い観光客にも支持されているのでは」と話す。
今回、バッグブランドとのコラボをしたことで、城崎温泉がファッション感度の高い若者の間でも認知されるようになった。本プロジェクトの推進にも深く関わった豊岡演劇祭実行委員会の田口幹也は「観光と地域の産業とをつなげる仕組みは、他のエリアでも活用できるはず。全国に広げていきたい」と意気込む。
コロナ後のインバウンド需要も視野に
城崎温泉の次の挑戦は、新型コロナウイルスが落ち着いた後のインバウンドの誘致。もともと、2012年から外国人観光客の受け入れ体制を整えて海外向けのPRに力を入れ、温泉に馴染みがある台湾を中心とした海外からの観光客も増加していた。
「海外のガイドブックには、主要な観光地として、大阪や京都と並んで城崎が紹介されています。日本らしい風情のある温泉街として人気があり、ここを拠点に京都など周辺の観光に出かける方もいらっしゃいます」(田口)
城崎は関東などでは「しろさき」と誤読される事もあり、「湯めぐりバッグ」に付けたタグを「城崎」ではなくローマ字表記の「KINOSAKI」とし、日本をはじめ世界中の方に馴染みやすくなっている。マスターピースで広報・販促を担当する福井優也は「バッグは、台湾をはじめとした海外でも販売しているので、来日いただけるきっかけになれば」と期待を込める。
バッグに付いてくる「外湯めぐり1日フリーパス交換券」の有効期限は2026年12月。それまでに果たしてどのくらいの購入者が城崎を訪れてくれるのか。プロジェクトメンバーたちは、心待ちにしている。