サウナや銭湯ブームに続け。城崎温泉がコラボバッグにかける期待

「湯めぐりバッグ」は、温泉宿で貸し出している“カゴ”をイメージした


そんな矢先。2021年1月ごろに、マスターピースから「温泉をめぐるためのバッグをつくりたい」とコラボ企画の提案があった。

「コロナ禍なので、こちらから『城崎に来てください』と声を大にしては言いづらい状況。我々も、どうしたらアピールできるだろうか? と模索していました。なので、カバンを通して、関東圏を中心とした多くの方にPRにできるというのは、素晴らしい案だと思いました」

そこで、研究会に所属する若旦那たち約20人を集めてプロジェクト化。マスターピースが制作したデザインをベースに、温泉宿で貸し出している“カゴ”をイメージして、サイズ感や色などを決めていった。


null
「YUMEGURI BAG」ブラックLサイズ(税込1万1000円)、ベージュSサイズ(税込9900円)

バッグは、フェイスタオル1枚で湯巡りをする人向けのSサイズと、バスタオルも入るLサイズの2サイズで展開。カラーは、黒・ネイビー・サックス・ベージュの4色と、城崎温泉限定販売の「コウノトリカラー」(黒・赤・白)を用意した。

側面にはマスターピースと城崎温泉のダブルネームタグが付いているほか、付属品として、一番に外湯を訪れた入浴客に配られる「一番札」をモチーフにしたレザーのパスケースもつく。一番札は転売問題などの影響で今年3月に廃止されたため、記念の意味も込めてデザインしたという。このパスケースの中に、「フリーパス交換券」が入っている。

null
「一番札」をモチーフにしたパスケース。組紐部分は、夜道の湯めぐりでも安心できるようリフレクターになっている

1カ月で1200個がほぼ完売に


今回マスターピースがコラボを申し出た背景には、方針の転換があった。同ブランドは昨今のアパレル不況を背景に、2020年秋に「BAG LIFE(カバンのある生活)」をキーワードとして掲げ、ファッションだけでなく“日常生活”に馴染むバッグを企画する方針を打ち出した。

その際、古家幸樹がディレクターに就任。新しいブランドの方針を打ち出した古家は、温泉はもちろん、サウナや銭湯など「お風呂に入る」という日常的な行為に寄り添うカバンをつくろうと考えた。加えて、もともと城崎温泉のファンだったこともあり「観光地とコラボをすることで、街づくりにも貢献できるのでは」と思い付いたという。

「湯めぐりバッグ」は、従来のスタッフバッグをベースに、湯めぐりの際に便利な止水性ファスナー付きのフロントポケットを配置するなど、マスターピースが得意な“機能美”を追求したという。

「旅舎やまとや」の若旦那・結城英和によると、温泉側のメンバーの中には“カゴの代わりになるカバン”という先入観があり、はじめにこのデザインを見たときは「想像していたものと違う!?」と驚きの声が挙がったという。

「でも、日常生活にも馴染むデザインなので、とてもいいなと思ったんです。例えば、このカバンを持って別の温泉や銭湯に行っていただき、“お風呂に持っていくバッグといえばこれ”といったカルチャーができれば面白いですよね」(結城)
次ページ > 「城崎温泉」と「カバンの街」を同時にPR

文=田中友梨

ForbesBrandVoice

人気記事