メリットは「本業とのつながり」
また、尾崎は自治体での副業のメリットを次のようにも語る。
「私は本業で教育事業に携わっていますが、民間に軸足を置きつつ、自治体の職員という立場から公教育にも携われることは、とても貴重な経験になります。この経験を本業にも活かしており、すでに新しい仕事にもつながっています」
また、ビジネス都市としてブランディングを行い、企業誘致などを進める京都市では、2021年7月に同市で初となる「副業専門人材」を2人採用。そのうちの1人である新色顕一郎は、新色は都内在住で、FinTechのスタートアップ・クレジットエンジンの役員として、事業開発や経営企画業務を担当している。
京都市の「副業専門人材」就任式の様子
新色も、自治体での副業と本業との好循環をメリットとして挙げる。
「必ずしもすぐに本業に結び付くというわけではないですが、副業で得た人脈や経験は今後に活きてくると感じています。いまはテレワークがしやすくなっているので、本業にて得られたスキルや経験を外で試す場として副業にチャレンジするのもいいかと思います。外で成果が得られれば、本業のモチベーションアップにもなるのではないかと思っています」
無報酬の“ふるさと複業”も増加中
こうした流れがあるなか、まずは実証実験といった形で無報酬(プロボノ)の自治体案件を多数扱うのが前出のAnother works社の「複業クラウド」だ。
同社が「副業」ではなく「複業」と呼ぶのは、金銭報酬や副収入だけが目的ではなく、経験報酬や感情報酬をも目的とした働き方がこれからのスタンダードだと考えているからだという。
「自治体の複業」を扱うようになったのは、2020年10月の奈良県三宅町が最初だった。連携協定を締結し、「DXアドバイザー」「人事・採用戦略アドバイザー」など7人の「複業」人材を募集した。以降、続々と地方自治体で人材のマッチングを支援している。エントリーする年齢層は20代~50代と幅広いという。
しかしなぜ、無報酬ながら応募する人が増えているのだろうか。Another worksの代表取締役CEOの大林尚朝はこう分析する。
「僕たちは『ふるさと複業』と呼んでいますが、地元に恩返しをしたいという動機の人が非常に多いです。副業禁止という大手企業に勤務している人でも、『お金をもらわないボランティアという形なら許可が出た』とエントリーして、実際に登用されている人もいます」