真珠湾攻撃から80年 「大空のサムライ」の居場所はもうないのか

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平田氏は過去、FBWの導入を巡る議論に加わった際、「これからは、坂井三郎のようなパイロットは出現しなくなる」という話になった。坂井三郎は太平洋戦争当時のエース・パイロットで、「捻じり込み」と呼ばれる超人的な操縦法でも知られる。平田氏は「坂井は、危険であり通常は飛行できないとされる領域に意図的に機体を入れ、そこを活用して常識を超える戦闘を可能にした。でも、今ではそんな操縦をしようとしたら、コンピューターがはねつけてしまうから無理なんですよ」と話す。当時の議論では、「超一流より安全が重要」という話になったという。

ある関係者はF35の導入にあたり、ロッキード・マーチンに操縦マニュアルを見せて欲しいと頼んだ。するとロッキードの担当者は笑いながら、「スマホを使うとき、いちいちマニュアルなんて見ないでしょ。F35にもそんなものはありませんよ」と半分、冗談めかして答えたという。この関係者は「確かに、F35の操縦はスマホの操作に似ている。自分や敵の位置、攻撃する最適の手段など、色々な情報が提示される。色々な情報を素早く整理したり、抜き出したりする能力が求められる」と話す。

関係者の間では「ベテランのパイロットが、F35のシミュレーションで対決した、ゲームの達人に敗れた」「ベテランは意図的にF35の搭乗から外している」といった話も出回っている。この関係者は「F35は、F4でエースと呼ばれたようなベテラン・パイロットのプライドをいたく傷つける飛行機なんですよ」と話す。

平田氏は「それでも、いかなる状況でも必要な情報がすべてF35のディスプレーに出てくるとは限らないし、また表示された情報がすべて正しいとは限らない。真贋を見極め、他の様々な情報も総合して的確に状況判断を行う力が必要とされる。もちろん、AIがどんどん発達すれば、そんな判断すらも補ってくれるのかもしれないが」と話す。

12月8日は真珠湾攻撃80年にあたる。先の大戦では優秀なベテラン・パイロットが次々犠牲になり、日本軍の大幅な戦力低下の一因になったとされる。現代はもはや、そういう時代ではないのかもしれない。

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文=牧野愛博

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