ビジネス

2021.12.02

ビッグデータ解析の真打ち登場! 研究者が起業したデータブリックス


「周りの人たちは、私ほど心配性のCEOは他にいないと話します」

そう語るゴディシは、長年インテルを率いたアンディ・グローブの「パラノイア(異常な心配性)だけが生き残る」という言葉を座右の銘としている。戦争下で育ち、子供時代に人が死ぬのを目撃したゴディシは、従業員に年に1度、「空が落ちてくる」という名の講義を受けさせる。それは市場が干上がったり、恐慌が訪れたりした場合の心構えを説くもので、コロナ禍の際にもその備えが役立っている。

ゴディシは、私生活でさらに差し迫った事態に直面した。息子の腎臓がんだ。幸いなことに、ゴディシ夫妻はテクノロジーとデータ解析の進歩によって、息子の体内に腫瘍が出現する前にその兆候をつかむことができた。データブリックスのような企業は、製薬やヘルスケア関連の企業が次の一歩を踏み出せるよう支援している。それは、AIを活用して医療の進化を加速させることだ。「10年前なら、息子は助からなかったかもしれない」と、ゴディシは語る。

「こうしたテクノロジーは、力になるのです」

COLUMN|データを溜める倉庫と湖、そして「湖畔の倉庫」




ビッグデータの時代といわれて久しいが、その膨大な量・性質のデータは分析・活用されてこそ初めて意味をもつ。そうしたデータを保管する代表的なサービスの一つが、データウェアハウス(Data Warehouse)だ。“データの倉庫”とも呼ばれ、基幹系などの複数の管理システムから必要なデータを収集し、目的別に再構成した統合データベースのことをいう。

それに対して、データレイク(Data Lake=データの湖)は、音声や動画、SNSのログを含むあらゆるデータをそのままの形で保存できる。データを構造化しておく必要がないため、データレイクにはさまざまなデータを迅速かつ安価に蓄積できる。ただし、何でも格納できるゆえ適切な管理がされていないと、欲しいデータを抽出するのが難しくなる。「データレイクハウス(Data Lakehouse)」は、両者をいいとこ取りしたデータ管理アーキテクチャで、データウェアハウスのデータ管理に、データレイクの柔軟性や経済性、スケーラビリティ(拡張性)、機能を取り入れたものだ。


データブリックス◎2013年創業、米カリフォルニア州サンフランシスコに拠点を置く人工知能(AI)・統合データ解析プラットフォーム開発企業。創業者は、「Apache Spark(アパッチ・スパーク)」を開発したカリフォルニア大学バークレー校の7人。データ管理・解析を革新した「レイクハウス」の普及を目指すデータ業界の旗手。

アリ・ゴディシ◎シリコンバレーの伝説的な起業家たちには、玩具の「レゴ」や「コモドール64」で育った人が少なからずいる。その例に漏れず、イランからスウェーデンへ移住したゴディシ(中央)も幼少時、両親に与えられたコモドール64でプログラミングを独学。自身もシリコンバレーに風穴を開けるスタートアップを作り上げた。

文=ケンリック・カイ 写真=ティモシー・アーチボルド 翻訳=木村理恵 編集=上田裕資

この記事は 「Forbes JAPAN No.077 2021年1月号(2020/11/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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