時には、スタートアップの成長に必要な要素が創業チームに完全にそろっていないケースもあるでしょう。成長ステージによっては、それでも大丈夫かもしれません。ただし、最低でもどのような強みが欠けているかを明確に把握し、意識した上で、その欠けている部分を埋める人材を見つけるためのプランを持っておいたほうが良いでしょう。
とはいえ、プロダクト開発に関しては、フルタイムの担当者がいない場合、Coralでは投資をためらうことが多いです。プロダクト開発の一部を外注、もしくは非常勤の人員に任せていたとしても、技術的な専門知識を持っていて開発全体をリードできるコアメンバーがチームにいてほしいものです。そうでなければ、どうしても開発ペースが遅れてしまうことが多く、技術的負債が積み上がったり、コストが手に負えないほど増大してしまうこともあるからです。
チームの構成も重要です。一般的に理想的だと言われている創業チームの構成は、「デザイナー・ハッカー・ハスラー」の3者から成っています。Airbnbの創業チームが典型的な例です。Joe Gebbia氏が「デザイン」したプロダクトを、Nathan Blecharczyk氏が開発し、Brian Chesky氏がCEOとして「ハッスル」、つまり資金調達から採用、その他全ての必要な業務を率いたのです。ただし、成功する全てのチームがこの典型に当てはまるわけではありません。要するに、チームの強みがそのスタートアップに必要な要素を満たしていればいいのです。
また、創業メンバーの得意分野や強みが重複しすぎている場合も注意が必要です。能力的に似ている部分が多いと、誰が何を担当し、何に対して最終的な意思決定を行うのかなど、不明瞭になるため、チーム内に軋轢が生まれてしまう原因になりやすいからです。自分の能力や専門的知識に非常に自信を持っているメンバーが2人もいれば、意見のぶつかり合いも多くなることでしょう。
一方で、メンバーの強みが重ならない場合、それぞれの役割分担が自然と明白になり、お互いのやるべきことをしっかりやってくれるだろうという信頼関係も生まれやすくなります。
創業メンバー一人ひとりを個人として評価するとなると、さらに多くの要素が関わってきますが、スタートアップチーム全体を評価する場合はCoralでは2つのポイントを見るようにしています。1つ目は、このスタートアップを発展させるには何が必要で、チームにその条件を的確に満たす強みを持ったメンバーがいるかどうか。2つ目は、チームの構成です。チームの能力の構成からして、高いチームワークや実行力を実現できるかどうか検討します。たとえチームが開発しようとしているのがロケットであろうと、美容系アプリであろうと、これら2つのポイントがきわめて重要であると私たちは考えています。
連載:VCのインサイト
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