小山、6歳ごろ。母親の経営する美容室の前で(写真=本人提供)
滝:感動をつくることが、薫堂さんのいちばん大きな使命。それが薫堂さんの役割だと僕は思いますよ。
小山:いまふと思い出したことがあって。テレビの放送作家というのは、視聴率の表を見せられて、数字がよかったら褒められるし、悪かったらボロクソ言われるわけです。それで20代のころは「もうテレビなんかやめよう」としょっちゅう思っていた。
でも、あるとき北海道を旅して、銭湯の脱衣所で兄弟らしきふたりの男の子が志村けんさんのコントを食い入るように見て大笑いしているのを見かけて。僕が書いた台本ではなかったけれど、これと同じように自分の書いたものに感動してくれる人がどこかにいるんだ、もうちょっとテレビの仕事を続けようと思ったんですよね。
滝:薫堂さんが脚本を書いた映画『おくりびと』だってそうだと思いますよ。感動を呼んだから米アカデミー賞外国語映画賞を受賞したんだろうし、製作から10年以上経っているのに、先日中国で初めて劇場公開されて大ヒットしている。感動を呼ぶ何かをちゃんともっているんです。
小山:自分のあずかり知らぬところで、自分の仕事が誰かの人生の分岐点になっていたりするんですよね……。滝さんの建てた国際交流・学生支援施設のおかげで人生が変わる留学生も大勢いるだろうし。僕も『料理の鉄人』がきっかけで料理人になりましたという人に出会ったことがありました。
滝さんの初めての貢献というのは、何歳のときの何に対してでしたか。
滝:僕は三菱金属を4年で辞めて数年後、父の死後に父の会社も引き継ぐことになりました。そのころから、お金は使うことのほうが多かった。
例えば「ぐるなび」の上場には65億円ほど突っ込んで、上場できなければ借金が返せない状況まで追い込まれました。約50年のベンチャー人生の中で、数百億円は使ったと思う。自慢じゃないけど、お金の回転というか、「稼ぐ前に使う」というタイミングを見極めるのがけっこううまいんです(笑)。
小山:コツは何かありますか。
滝:ひとつは仲間をつくること。何かをしようとするとき、仲間が得られないと絶対に完遂できない。
もうひとつ僕が大事にしているのは、クリエイティブな人材への気遣いです。なにしろ彼らに力を発揮してもらいたいわけだから、食事をご馳走したり、話をきちんと聞いたりする。そして自分の依頼した仕事を引き受けていただいた暁には、彼らに頼まれたことはきちんとやる。そのためのお金は惜しまない。