京の美意識と触れ合うホテル 「東山 四季花木」

閑静な東山エリアに佇む、スモールラグジュアリーホテル「東山 四季花木」。オーナーは建築家とインテリアデザイナーの夫婦だ。もともとホテルや住宅の設計を手がけていた彼らは、「自身が泊まりたい宿」を追求し、時間をかけて設えやホスピタリティの方向性を試行錯誤した。完成したホテルは、全8室。それぞれに趣が異なり、それでいてひとつのホテルとしての美意識が貫かれていた。

一流の作品やそこに息づく精神をホテルという空間で提供する


最上階の客室「庭玉(ていぎょく)」に入ったとき、「静謐」という言葉が浮かんだ。

美意識に彩られてはいるが、決して華美ではない、品位ある落ち着いた空間デザイン。ゲストが居心地良く過ごせるように、部屋の隅々まで目配りされたホスピタリティ。京都まで来たものの「ああ、今日は外出を控えて、ここで1日過ごしたいな」と思わせてしまう、上質な空間だ。


最上階にある客室「庭玉」。ソファーはイタリアのアルマーニで一目惚れしたファブリックで特注した

それもそのはず、「東山 四季花木」は、京都在住の建築家とインテリアデザイナーの夫婦が、長年仕事で培ってきたそれぞれのセンスや技術、人とのつながりを存分に生かし、構想・設計・デザイン・運営を手がけているのだ。

5階建てのフロアに、客室は8室。「忘筌(ぼうせん)」「遠州」「庭玉」など、京都の茶室にちなんだ名がつけられ、それぞれに違う趣きを放つ。


「庭玉」の和室。棚の襖戸に貼られた天平大雲の唐紙は、1624年(寛永元年)創業「唐長」の作

たとえば「庭玉」は小さな日本庭園、階下の「遠州」は見事な盆栽が、客室の印象を決定づける。加えて、イギリスのアンティーク、清朝の家具、日本の骨董などが、地域や時代を超えて絶妙な調和を見せる。

エントランス、フロント機能もある2階の「茶論(さろん)」、廊下、客室、露天風呂と、すべてにおいて妥協なき空間づくりを徹底したのは、インテリアデザイナーの北山ますみだ。京都で建築やデザインの仕事を始めて35年、中京に住んで20年になるという。

「京都には、お茶、お花、庭、工芸、アートなど、それぞれの世界に一流と呼ばれる人がおり、豊かな食文化が息づき、禅などの思想も間近く存在します。私は光栄にもさまざまな人とのご縁をいただきました。そのご縁を活かす場、京の文化や思想を他の皆様にも深く知っていただける場をつくりたいと思って、このようなホテルを構想したのです」


リビングやバスルームから臨むことのできる日本庭園。露地(茶庭)にならい、常緑樹が植えられている
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文=堀 香織 写真=yOU(河崎夕子)

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