新たなパンデミックへの備えが「反科学」への警戒である理由

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誤った名前を付けられたインフルエンザ、「スペイン風邪」の大流行が世界を襲ったのは、1918年。そのパンデミック(世界的流行)は何度かの流行の波を繰り返し、1920年には収束したが、インフルエンザウイルスが消滅することはなかった。

そして、およそ1世紀後の2020年1月に中国で初めて確認された新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染は、瞬く間に世界中に拡大。スペイン風邪が流行して以来、最大規模のパンデミックとなった。2021年11月末の時点で、まだ終息の兆しは見えていない。

私たちにとって、次のパンデミックに備えるのは何より重要なことだ。そのためには、新型コロナウイルス感染症(Covid-19)に対して世界が取った対応を、教訓とする必要がある。

今回のパンデミックでは、検査・治療の方法やワクチンの研究開発が驚くほど迅速に行われ、世界の科学界は前例のない方法でデータを共有。これらは、過去に起きたエピデミック(流行)への対応と比べ、歓迎すべき変化だといえる。

だが、一方では大半の国が感染症への対応における戦略を立てていたにもかかわらず、あまりにも多くの国がそれを無視したか、無計画に採用した。中でも大きな問題となったのは、政府から国民へのコミュニケーションが不足し、さらに一貫性を欠いたことだ。公衆衛生上の対策が政治化される、誤情報が拡散されるという問題もあった。

そして、非医学的介入(公衆衛生対策)とワクチン接種プログラムの実施、そして世界的なワクチンの公平な分配を目指すことを特に妨げたのは、各国のリーダーたちの能力の欠如だ。

パンデミックへの準備として欠かせないのは、政治家たちが証拠に基づく長期的な戦略を策定し、国民に情報を提供し、世界保健機関(WHO)のマーガレット・チャン前事務局長が「健康安全保障」と呼ぶものの実現に向け努力することだ。

チャン前事務局長は、「パンデミックを引き起こす可能性がある呼吸器病原体は、気候変動や環境悪化、核戦争と同様に深刻な、人類の存続を脅かす問題だ」との見方を示している。

米国のスコット・ゴットリーブ前食品医薬品局(FDA)長官もまた、公衆衛生に関する問題への準備を整えておくことは、国家安全保障の視点から見るべきことだと述べている。
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編集=木内涼子

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