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2021.11.30

「アップル方式」でEVを製造するフィスカーの型破りな戦略

フィスカーCEOのヘンリック・フィスカーと電動クロスオーバーSUV「オーシャン」(Photo by Mario Tama/Getty Images)

ヘンリック・フィスカー(Henrik Fisker)は、自動車業界でジェットコースターのように浮き沈みの激しいキャリアを送ってきた。彼が手がけたBMWやアストン・マーティンのデザインは称賛を集めたが、最初に立ち上げた会社はすぐに倒産に追い込まれた。彼は現在、ロサンゼルス本拠のEV(電動自動車)メーカーのフィスカー(Fisker)のCEOを務め、製造を外部委託する型破りな手法で注目を集めている。

同社は先週、米国で開催されたLAモーターショーで、電動クロスオーバーSUV「オーシャン」の量産モデルを公開した。ベースモデル「スポーツ(Sport)」は価格が3万7499ドルで、1回の充電で250マイル(約400km)走行できる。最上位モデル「エクストリーム(Extreme)」の価格は6万8999ドルで、1回の充電で最大350マイル(約560km)走行でき、3.6秒で時速0kmから96kmまで加速する。

スタイリッシュなデザインが特徴のオーシャンは、リサイクル素材を多用している。また、大型のセンターディスプレイは縦にも横にも設置できる。だが、オーシャンの最大の特徴は車両製造の大手企業マグナ(Magna)に製造を委託していることだ。

フィスカーによると、オーシャンの販売開始は2022年11月と、ライバルのEVスタートアップのリビアン(Rivian)やルーシッド(Lucid)より1年遅いが、量産体制は両社より早く整う予定だという。フィスカーは、2023年までにオーシャンを最大5万台生産し、2024年には総生産台数を数十万台規模まで拡大することを目指している (彼によると、2022年11月より前に出荷を開始できる可能性があるという)。

「スタートアップの多くは、1日1台生産できるようになった段階で生産を開始したと発表する。しかし、マグナではそれを生産開始とは言わない。2022年11月までは長く感じるかもしれないが、マグナが生産を開始できれば、他のEVスタートアップより遥かに早く増産できるようになるだろう。我々は、大手の製造業者と協業しているからこそ、それが可能なのだ」とフィスカーは話す。

フィスカーをはじめとするEVスタートアップは、業界首位のテスラに挑み、今後10年間で爆発的な成長が見込まれる無公害車市場で大きなシェアを取得することを目指している。投資家の関心も高く、IPOを果たしたリビアンとルーシッドの時価総額はそれぞれ1136億ドルと909億ドルに達し、897億ドルのゼネラルモーターズと、775億ドルのフォードを上回っている。

フィスカーは、特別買収目的会社(SPAC)との合併により7月に上場を果たし、まだ収益をあげていないにもかかわらず時価総額は60億ドルを超えている。
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編集=上田裕資

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