ビジネス

2021.11.29

世界市場覇者アマゾンが飲み込む、データ駆動型のヘルスケア


解散後のアマゾンの本気度は?


アマゾン・ケアのサービス開始の一方で、2021年1月4日Haven Healthcareが解散を発表し、2月末にオペレーションを終了した。

創設直後から経営幹部に次々と業界の著名人をリクルートして注目を集め、2019年には保険会社大手、大手薬局チェーンとの事業提携や、JPモルガン社員向けサービスのパイロット事業計画等を発表した同社であったが、パンデミック渦中の2020年5月にCEOのアトゥル・ガワンダが辞任。その後、表立った動きのないまま同社ウェブに「3年間多種多様なソリューション、サービスのアイデアを検討した。今後は非公式に提携しながら、各社が、これらの成果をてこに、自社従業員のためのソリューションを探究していく」との解散発表となった。

大手企業3社が束になっても、その資金力をもってしても、医療業界は簡単には動かせなかったとし、解散=失敗とみる評価も多い。だが、そうだろうか?「その後」の動きが見えるのはアマゾンだけであるが、実はアマゾンはパンデミック最中に医療関係諸団体と共同で非営利の業界団体Moving HealthHome(ムービング・ヘルス・ホーム)を立ち上げた。

団体立ち上げの趣旨は、従来の医療機関中心の医療供給体制を今後は在宅ケア中心・患者中心の制度の変革を目的に、調査・研究、啓発、情報提供さらに政策提言までの幅広い活動を行う。政策提言は、当面、医療保険からの遠隔医療や在宅ケア等への償還支払いの確立・拡充に重点を置く計画だ。当然アマゾン・ケアにも追い風となる政策づくりである。医療分野にかけるアマゾンの本気がうかがえる行動ではないか。

様々な業界をディスラプトし、世界最大のプラットフォーマーに上り詰めたアマソンは、コロナ禍を追い風にヘルスケアまでも飲み込もうとしている。


Amazon Care アマゾン・ケア◎2019年にアマゾンのシアトル本社社員のためのパイロット・プログラムとしてスタート。チャットボットによる医療相談、ビデオ通話によるオンライン診療、検査や予防接種のための看護師派遣などのサービスを提供。

文=西村由美子 イラストレーション=ムティ(フォリオアート)

この記事は 「Forbes JAPAN No.085 2021年9月号(2021/7/26発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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