ワンクリックで欲しいものがすぐ自宅に届く──アマゾンの登場で、20年前には考えられないほど買い物が便利になった。ヘルスケアもワンクリックで届けられる時代がすぐそこまでやってきている。
21世紀初頭、世界市場の覇者はプラットフォーマーだ。彼らは、先端技術と新しいビジネスモデルで旧態依然とした業界に参入。サービスの提供者と受け手間の情報の不均衡を解消し、伝統的なビジネスモデルの無駄を省き、効率を上げ、コストを削減し、価格破壊とサービスの向上を実現して急成長を果たした企業群だ。
これらプラットフォーマーがこぞってヘルスケア市場への参入を開始した。トレンドは世界共通だが、米国での動きが顕著でわかりやすい。注目はアマゾン・ドット・コム社(以下アマゾン)が社員のためにスタートした新しい医療サービス「アマゾン・ケア」である。
アマゾン・ケアがあれば、患者は病院に出向かなくていい。アプリを開いて、チャットで相談するか予約すると、診察はオンラインで受けられ、検査や治療、健康診断も予防接種も都合に合わせて自宅や職場に往診で届き、処方薬はオンライン薬局から宅配で届く。
配送センターで仕分けをしていたら腕に大きな赤い発疹が出た。携帯で写真を撮ってアプリにアップし、チャットで相談。すぐに医師からビデオ・コールがあり、携帯のカメラで発疹部位を見せると、念のためと職場に出張検査を派遣してくれる。処方された塗り薬は帰宅途中の薬局で受け取れる。
急な出張の前に新型コロナウイルスのPCR検査が必要になったら、オフィス出張検査を依頼。昼休みに済ませることもできる。
アマゾン・ケアの紹介動画には、そんな新しい時代のヘルスケアの姿が紹介されている。こんなサービス使ってみたいと思わないだろうか。
アマゾン・ケアのスタートは、アマゾン、バークシャー・ハサウェイ、JPモルガン・チェースの世界大手3社が2018年9月に共同創業したソーシャル・ベンチャーHaven Healthcare(ヘイブン・ヘルスケア)にさかのぼる。創業の目的は、合わせて100万人を優に超える3社の従業員のために「低コストで質の高い」医療を供給することだ。具体的には1 医療保険業務の簡素化・効率化、2 プライマリ・ケアへのアクセスの改善、3 医薬品費の抑制で、3社が共同出資、アマゾンが技術開発・商品開発を担当した。