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Ethan Miller/Getty Images

米アマゾンは今月、自社の従業員向けに開発したオンライン診療サービス「アマゾン・ケア」を米ホテル運営大手のヒルトンに提供する契約を結んだ。アマゾンはクラウドサービスでも、社内向けにつくったサービスを外販して大きな成功を収めた前例がある。医療は破壊(ディスラプト)するのが難しい業界とされるが、アマゾンが今回の契約を突破口にそれを進めていけるか注目される。

アマゾン・ケアは、企業の従業員らがオンデマンドで診療を受けられるプラットフォームで、自分の都合に合わせていつでもすぐ医師とつながれる、検査結果や治療などのフォローアップケアを自宅で受けられる、処方箋を自宅に届けてもらえる、医師や看護師らからなるチームから手厚いケアを受けられる、などとうたっている。

アマゾン・ケアは、ケアへのアクセスをアプリを使うのと同じくらいシームレスにしようとするものだ。当初の目的はアマゾンの従業員がケアをもっと利用しやすくなるようにすることだったが、社内でかなり成功したことから他社への提供も始めた。

これまで、「サービスは充実しているものの大手の顧客を開拓できていない」という批判があったが、ヒルトンとの契約はそれを覆すものだ。また、おりから人手不足で各社が人材確保策に頭をひねるなか、従業員向けのオンデマンドのオンライン診療サービスというのは採用面でのアピールポイントにもなりそうだ。

次なるAWSになるか


アマゾンの診療プラットフォームを他社の従業員が利用できるようになるというのは、従業員向け医療保険サービスの従来のモデルを根底から変えるものでもある。もっとも、アマゾンが自社向けに開発したサービスの外板というやり方で現状を破壊しようとするのは、これが初めてではない。

アマゾンは電子商取引大手として成長するさなかにあった時期、巨大なデータインフラを効率化する必要に迫られたために、クラウドサービス「アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)」を開発した。AWSが社内で非常にうまくいったので、それを他社にも販売することにしたのだった。

AWSは当時、企業向けに強力で安全な最先端のクラウドサービスを提供する業界初の試みだった。今では世界各国で広く利用されており、顧客にはコカ・コーラやキャピタル・ワン、ネットフリックスといった各業界の大手も名を連ねている。

それに照らせば、マゾン・ケアはまだ始まったばかりで、ヒルトンとの契約はけっして終わりではない。ただ、今後数年間は障害にも出くわすこともあるだろう。医療業界は、おそろしく複雑な規制やさまざまな市場勢力によって現状維持への力が強く働いており、破壊するのが難しいことで知られるからだ。

だが、アマゾンがこれまでにほかの業界で示してきたように、医療業界の今後のあり方を方向づけるうえでも無視できない存在になるのは間違いないだろう。

編集=江戸伸禎

Amazonヒルトン

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