だが、消費者が戻ってきている現在、ターゲットとウォルマートは、アマゾンにないもの、つまり「実店舗のネットワーク」を活用して、誘引力を見いだしつつある。
ターゲットの場合、買い物客はいまでも、人と人との接触を好んでいるようだ。同社のクリック&コレクト事業(ネット上で商品を購入し、実店舗で受けとるサービス)は、ほぼ1900店の米国店舗で活況を呈している。
ウォルマートの持つ利点は、フルフィルメント/流通インフラがアマゾンよりもはるかに大きいことだ。ジャングル・スカウトによれば、アマゾンが110センターであるのに対し、ウォルマートは150余のセンターを擁している。ネットで注文した商品を受けとれる店舗も4700店に上っている。
ターゲットもウォルマートも、パンデミックが起こる前から、信頼性の高いEコマースのプラットフォームを開発しようとしていたが、世界的な活動停止により、そうした取り組みに緊急性が生じた。
どちらの会社も、アマゾンにとって差し迫った脅威になっているわけではない。アマゾンはいまも、Eコマースを支配している。市場シェアは、ウォルマートが7%、ターゲットが2.2%であるのに対し、アマゾンはおよそ40%だ。
しかし注目に値するのは、両社のEコマース事業が、アマゾンよりも急速に成長していることだ。さらに言えば、オンラインニュースサイト「eMarketer.com」によると、米国の小売Eコマース企業上位10社のいずれをも上回っている。アマゾンのEコマース事業の年成長率は15%であるのに対して、ウォルマートのオンライン売上は21%、ターゲットは23%の成長を見せている。
Eコマースと実店舗の融合は、パンデミック勃発当初は直観に反するように思えたかもしれない。だが、アマゾンが現在、自社の店舗ネットワークに大々的に投資している理由はそこにある。
過去の記事でも伝えたように、アマゾンは食料雑貨の販売に関して、大規模な店舗コンセプトを展開しつつある。国際ショッピングセンター協会(ICSC)によれば、推定3600店舗が計画されているという。実現すれば、おそるべきクリック&コレクトのネットワークになるはずだ。