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テクノロジー

2021.11.26 08:30

虫歯の減少で歯科経営は崖っぷち? 「歯科DX」で通いたくなる歯科へ

(左から)SheepMedicalの田畑信哉CSO、東大貴CMO豊島正規CTO

日本人が歯科医院へ行く理由を問われると、大半の人が「虫歯の治療」と答えるだろう。

厚生労働省の調査でも、歯科の受診理由の第1位が虫歯治療となっている。痛みなど何らかの問題が起こってから病院に行くケースが多いのだ。一方欧米では、虫歯や歯周病を未然に予防するための「予防歯科」を目的に通院することが多い。

口腔内の環境が人の健康に大きな影響を与えることは、多くの研究結果からもわかっている。欧米では口腔内の状態を「健康管理の入り口」と考え、口腔ケアのサプリメントなども浸透しはじめている。

「予防歯科」が普及しない日本


厚生労働省が2016年に発表した「歯科疾患実態調査結果の概要」によると、歯周病の診断指標にもつながる「歯周ポケットが4mm以上」の高齢者は、増加を続けている。30歳以上から55歳未満で「歯茎から出血した経験がある人」も、実に4割を超えている。

「一度大きくなった歯周ポケットが回復することはありません。歯周病は歯を失うリスクを高めます。歯を失って噛むことができなくなることは、健康的な生活の質にも影響します。だからこそ口腔ケアは非常に重要なのです」

予防歯科で遅れをとっている日本の歯科業界に危機感を覚えているのが、クリアアライナー(マウスピース型歯科矯正)の製造販売を手掛けるスタートアップ「SheepMedical」CMOの東大貴だ。2017年創業で、クリアアライナー製造で国内トップクラスのシェアを誇る。

「日本でも、口腔ケア用品メーカーなどが予防歯科の啓蒙に力を入れはじめていますが、まだまだ認知されていない。ホワイトニングや口臭対策用品は売れるのですが……。医師と患者の間に、予防歯科の目的や方法などといった情報の格差があるからでしょう」

12歳の虫歯保有率は10年で激減


こうした現状は、歯科医院の「経営」においても大きな課題となっている。単価の低い保険治療をメインに経営をしている歯科医はとても多忙で、患者数が多い院では15分単位で診療を入れているケースもある。東によると「現場は目が回るほど忙しいのですが、それでも儲かっているとはいえない状況」だという。

そんな中、さらなる課題となっているのが若年層の虫歯保有率の低下だ。先の「歯科疾患実態調査結果の概要」によると、12歳の虫歯保有率は2005年に58.5%だったのが、2016年には10.3%まで減少している。今後はますます若者の通院が減ってしまうことになる。治療目的以外、つまり予防歯科やメンテナンスのために歯科を受診する人を増やさないと、経営が成り立たなくなるのだ。
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文=尾田健太郎 取材・編集=田中友梨

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