虫歯の減少で歯科経営は崖っぷち? 「歯科DX」で通いたくなる歯科へ

(左から)SheepMedicalの田畑信哉CSO、東大貴CMO豊島正規CTO


歯科はカルテをつくらない?


こうした課題を踏まえてSheep Medicalは、2022年から歯科DXを目指す「歯科DXシステム構想」をスタートする。クリアアライナーの受発注や製造プロセスで培ったデジタル技術を、歯科経営にも生かしたサービスだ。

具体的なアプローチのひとつが、歯科医院への「デンタルコンディション」アプリの開発。歯科医が口頭で指示した治療記録や経過、保険点数を、歯科助手などのスタッフがタブレットで入力するだけで電子カルテができる。

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デンタルコンディションのデザインモックアップイメージ

現状、歯科医院では総合病院や診療所のように、患者情報をデジタル形式で保存できていないケースが多い。例えば虫歯の場合などは、完治すれば治療は完結するため、カルテの必要性が低いと考えられがちなのだ。記入する時間すら惜しむほどに多忙であることも理由のひとつとなっている。

ただ、東はカルテの電子化は歯科医院の将来に不可欠なツールになると言う。患者の治療記録や履歴、口腔内の状態が簡単に管理できることで、予防歯科の呼びかけに活用できるのだ。

「義歯や詰め物の状態や耐用年数、口腔内の状態に合わせて、歯の痛みなどの問題が出る前の来院を促すコミュニケーションをとることができます。再来院の呼びかけは、いまだにスタッフが電話をかけたりDMをつくったりして行っている院が多いですが、自動化することで効率化できるというメリットもあります」

さらに、電子カルテの導入をサポートするために、アプリは直感的で簡易なUIを採用している。

また、患者側の治療体験向上にもつなげようと構想中だ。

「患者側が利用するアプリ『ハオシル』(歯を知る、の意)の開発も進めています。歯科医院向けの電子カルテとハオシルを連動させることで、予防歯科の啓蒙にもつなげたいです」

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ユーザー画面の”モックアップデザイン”(制作中)

なお、歯科医院の経営を安定させて持続可能性を高めるためには、保険診療だけではなく、矯正や審美歯科などの自由診療目的の患者を増やすことも重要になる。現状は新たな診療メニューを加えるために準備をする時間も、人的リソースもないが、デジタル化を進めることで解消されるという。

「自由診療を始めるためには、新しいメニューを導入するための準備時間の確保、院内のオペレーションの円滑化、患者とのコミュニケーション、の3つが不可欠。患者さんのデータの管理を効率化することで余裕ができるのです」
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文=尾田健太郎 取材・編集=田中友梨

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