──M&Aの意思決定の決め手は。
杉江:繰り返しになるが、事業として、そしてチームとしての、フィットだ。もうひとつは、ペイパルが、米国でのBNPL事業をはじめ多様なプロダクトを世界で展開しているため水平展開も垂直展開もできるパートナーという点だ。私たちが日本でもっと勝ち切りたいというなかで、垂直展開できることは、成長を「加速」化できる点で魅力的だ。日本ではやく勝ち切って、次のステージにいくことができる。
世界基準のことをしているだけ
──シリーズDラウンドで、米ウェリントン・マネージメント、ソロス・キャピタルマネジメント、香港タイボーン・キャピタル・マネジメントなど、これまでもグローバルな資本政策をしてきた。哲学は。
カマー:なぜ、日本の資金しか頼らないのか。当たり前だが、世界で一番いい投資家を探すのは当然。チームメンバーも投資家も、ビジネスパートナーも同様。私たちは何も変わったことはしていない。世界基準のことをしているだけとしか言いようがない。日本でも、投資いただいた伊藤忠商事から多大な支援を受けてきた。グローバルなビジョンも理解していただいた上で、協力してくださっている。日本の投資家か海外の投資家か、であえてわけて見ているわけでもない。
もうひとつは、BNPL市場に対する見方だ。日本では、ユニークな市場だと見受けられているが、グローバルで見ると、スウェーデンのクラーナ、豪州のアフターペイなど大きなプレイヤーがいる。世界の投資家の目から見ると、成功企業が多くあるBNPL市場で、日本市場の潜在可能性も含めて、チャンスがあるという認識だ。日本では見落とされがちな市場だったとも言える。
杉江:ひとつ大事にしてきたことは、意味のあるインサイト、意味のあるリレーション、意味のあるプロダクトを提供してくれる投資家だけを迎えたいという点だ。それは、海外投資家だけではない。伊藤忠商事に投資いただいたのもそういう視点で、だ。結果的に、20年に起きた弊社サービスの不正利用が問題になった最中にも追加出資していただくなど、日本での事業展開における強力な支援をいただいた。
──今後については。2人は引き続き経営陣として残り続ける。
ケネバン:「Win JAPAN」のためにペイパルの経営陣、Paidyの経営陣で戦略を練っているが、ペイパルとしては「グループの総合力」をいかにPaidyの成長戦略につなげ、さらにはペイパルの成長戦略につなげて「加速」していくか。これからの展開については、楽しみにして欲しい。私は25年間、日本で大企業をはじめ、多くの経営陣を見てきたが、ラッセルと陸のコンビ、そして彼らが作り出している組織を極めて高く評価している。
カマー:私たちの強みは、常に発明を続けて、早く動けること。そして、新しいサービスを常に提供しながら、既存のサービス、プロダクトを常により良くしていくところ。非常にユニークな顧客体験をどんどん出し続けたい。
杉江:私たちは「三頭体制」と呼んでいるが、バックグラウンドの違う3人が、ベスト・アンド・ブライテストチームで、一緒にみなで挑もうと。そのなかで、僕らの共通標語は「Win JAPAN」。これが目的であり、しっかりと組んでいきたい。