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伊藤隆敏の格物致知

10月31日の衆議院議員選挙の事前予測(開票開始直後でも)では、自民党が選挙前(276議席)から大きく議席を減らし、単独過半数(233議席)獲得も不確実といわれていた。菅義偉総理(当時)が、自民党総裁選に立候補しない(9月3日表明)とした理由のひとつが、内閣支持率(NHK)が29%まで低下していたことだった。

また、10月の発足直後の岸田文雄内閣の支持率が50%を切るなど、就任直後のハネムーン効果も見られなかった。1日の新規感染者数(7日移動平均)は、8月下旬に2万5000人を超えていて、自宅療養中に亡くなるという医療崩壊のニュースが続いていたことが影響していた。

しかし、結果は、自民党が261議席を獲得、衆議院の各委員会の議長を独占できる「絶対安定多数」を確保した。一方、野党は今回の総選挙を「政権選択選挙」と位置付けて、共産党を含む野党共闘を実現して多くの選挙区で野党統一候補を立てた。

立憲民主党(選挙前109議席)は、事前予測では大きく議席を伸ばすといわれていたが、結果は96議席と逆に議席を減らした。共産党は微減、公明党と国民民主党は微増となった。これに対して日本維新の会(以下、維新)が、11議席から41議席と大きく議席数を伸ばした。

総選挙の結果については、さまざまなとらえ方がある。第一に、自民党でも立憲民主党でもベテラン議員の何人かが小選挙区で落選したことから、党派に関係なく、世代交代の選挙だった。

第二には、10月に新型コロナの感染者数が急減したことから、コロナ対策の失敗による自民党批判が和らいだ可能性がある。総選挙当日の新規感染者数(7日平均)は264人と、2カ月前の100分の1まで減少していた。この間にワクチンを2回接種した人の割合は、40%から72%まで上昇している。医療崩壊はのど元を過ぎていた。

第三に、コロナ対策の失政をもたらした自民党に対して批判的な、無党派層と自民党支持層、さらには立憲民主党の支持者のなかにも、共産党を忌避する傾向が強く、野党共闘は成功しなかった。自民党、立憲民主党以外の第三党(例えば、維新)の支持が上昇した可能性が高い。

第四に、憲法改正を積極的に求める自民党と維新、国民民主党の議席数を合計すると、衆議院の3分の2を超えるので、自衛隊の存在を憲法に書き込むなどの内容をもつ憲法改正の議論が先に進む可能性が出てきた。日本を取り巻く安全保障環境が厳しさを増しているなかで、多くの国民の支持を得られるようになってきたといえる。これを政治的な右旋回というのであれば、それは起きている。

文=伊藤隆敏

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