一般投資家はトランプ・メディアに直接投資することはまだできないが、同社と合併予定のSPAC(特別買収目的会社)の「デジタル・ワールド・アクイジション(DWAC)」の株価は、合併のニュースが報じられてから4週間で、10ドルから60ドルに高騰した。
仮にこのSPACの株価が60ドルを維持すると、合併後の評価額は22億ドルになる。同社に関連した1500万のワラントに出資している投資家には、さらに3億ドルが上乗せされる。トランプ・メディアの現在の所有者(トランプ自身の持ち分は明らかになっていない)は、ディールの一環として推定8600万株を受け取ることになり、その額は約51億ドルに相当する。
そして、株価が合併後1カ月半に渡って30ドル以上で推移すると、所有者らは追加で4000万株(現在の価値で24億ドル相当)の株式を受け取ることができる。これらを合算すると、100億ドルに達する。
これは、設立間もない企業としては莫大な価値だ。一般的に投資家はSPACを過大評価する傾向があるが、SPACは彼らの持ち分を希薄化する構造になっている。スタンフォード大学とニューヨーク大学の研究者は、2019年から2020年にかけて合併し、12ヶ月以上市場で株式が取引された16のSPACを調査し、4月に論文を発表した。それによると、株式市場全体が成長したにも関わらず、SPACの価値は平均で35%減少したという。
「トランプ・メディアの場合は、誇大広告に誇大広告が組み合わさり、まるでSPACがステロイドを使用したようなものだ」とスタンフォード大学でビジネスと法学の教授を務めるMichael Klausnerは話す。
このSPACが話題を呼んだ理由は、米国のビジネス史上最も優れたマーケターの1人であるドナルド・トランプが関わっているからだ。米国の大統領は、退任後に講演や回想録の執筆で多額の報酬を得ることが多いが、トランプの取組みは、ベストセラー本の執筆や講演活動を行うより野心的で、より儲かる可能性がある。