新たな食品ジャンルとして注目を浴びている完全栄養食の雄はどのように爆速成長を遂げたのか。
「炭水化物中心の主食を、栄養バランスがいい完全栄養食に変える」。こんなコンセプトを掲げて、年間販売食数を対前年比3.7倍に伸ばした商品がある。ベースフードのBASE FOODシリーズだ。2017年に、1食で1日に必要な栄養素の3分の1が取れるパスタ「BASE PASTA」のオンライン通販を開始した。19年にはパン、21年にはクッキーを展開し、シリーズの累計販売食数は1000万食を超えた。
この勢いをコロナ禍の特需ととらえる人もいるだろう。確かに、自宅で過ごす時間 や自炊の機会が増えるなか、手軽に栄養バランスを取りたい人たちのニーズにBASE FOODの商品特性やサブスク型のビジネスモデルがハマった感はある。しかし、代表取締役CEOの橋本舜は、この数字は想定していた通りだと言い切る。
「創業以来、どうすれば指数関数的に成長し続けられるかを常に考えてきました。この1年で何か特別なことをやったわけではないし、成長速度はずっと変わっていない」
もちろん、想定外もあった。コロナ禍で資金調達の環境が一時的に悪化し、「攻め」の戦略を取ることが難しくなった。19年に進出した米国市場からもいったん手を引いた。だがその分、顧客ニーズや広告のあり方、組織運営の見直しなどに注力した結果、「効率的に経営できる筋肉質な組織になった」という。
橋本の経営の根幹にあるのは、正しさへのこだわりと「カイゼン」だ。公式ホームページ経由の定期購買を中心にD2Cのビジネスを展開してきた理由はそこにある。
「正しいことを追い求め続けないと、お客様は継続して買ってくれない。組織が誠 実であり続けるための選択でした」
ベースフードでは「BASE FOOD Labo」という自社コミュニティサイトを運営している。そこでは登録会員を「研究員」と呼び、食を探究する仲間と位置づけている。21年10月時点で会員数は1万人超。顧客から拾い上げた声は新商品の開発や既存商品の改良に生かし、改善点は毎月「カイゼン報告」として公開している。
「創業以来一度も売り上げが停滞していないのは、直販を通じてお客様の声を拾い、『より正しい商品にできないか』を常に考えてきたからだと思います」