2021年、シャンパーニュの老舗メゾン、ルイ・ロデレールは、そのNVシャンパーニュを、前身の「Brut Premier」と名付けられた商品から「Collection」へと刷新した。その背景には、気候変動や時代の変化があるというから面白い。
同メゾンで最高醸造責任者を務めるジャン・バティスト・レカイヨン氏はこう説明する。
「シャンパーニュは、時代とともに変化しています。例えば、ブドウの熟度を求めていたかつての時代から、いまはフレッシュさを追い求める時代になっていると感じます。こうした時代の変化に対応し、新しい、もっと面白いNVを創ろうと思いました」
Louis Roedererの最高醸造責任者であるジャン・バティスト・レカイヨン(Jean-Baptiste Lécaillon)氏
近年のシャンパ―ニュでは、気候変動の影響やブドウ栽培の技術の向上により、熟度の高いブドウが収穫できる年が増えた。とりわけ、ルイ・ロデレールの場合、オーガニック栽培に力を入れるなど、20年以上かけて自社畑の改善に取り組み、ブドウの熟度は上がり、質もより向上している。
新商品のCollectionは、NVであっても、ベースとなる最新収穫年のアイデンティティを明確にワインに表現し、その年に造り得るベストなワインを目標に創作される。これは、かつてのNVシャンパーニュの考え方と逆の発想だ。
例えば、2021年に新発売となった「Collection 242」は、2017年の収穫年のワインをベースにリザーヴワインがブレンドされている。2017年は、天候不順に見舞われ、特にピノ・ノワールのダメージが大きかったが、シャルドネは素晴らしいものが収穫できた。そうした年の特徴を踏まえ、この242には、シャルドネが通常より多くブレンドされている。
さらに、Collectionは、オーク樽で保管していたリザーヴワインに加えて、新しいリザーヴワインのシステムを導入した。「パーペチュアル・リザーヴ」とよばれるもので、一つのタンクに、毎年ワインを継ぎ足していく方式でリザーヴワインを保管する。これにより、年を経るごとにワインに複雑さが加わる上、ルイ・ロデレールの場合、空気に触れさせない状態で保管しているため、ワインにはフレッシュさが保たれる。
土地の個性を尊重したワイン造り
Collectionのもう一つの特徴が、ブレンドを構成する各ワインが、より厳選されていることだ。各ワインは、ルイ・ロデレールのワインの基礎をなすシャンパーニュの主要各地区・村「Heart of the Terroir」のなかから、その場所を最もよく表し、その年の特徴を最も表現したものが選ばれる。すなわち、ブレンドを構成する150を超えるワインの一つ一つを、これまで以上に慎重に選び、緻密なワイン造りをおこなうというのだ。
ルイ・ロデレールのオーガニック栽培の自社畑
シャンパーニュの大手メゾンは、自社畑からのブドウだけではなく、栽培農家からの買いブドウでシャンパーニュを造る。
ルイ・ロデレールは自社畑の割合が高く、自社畑からのブドウで全生産量の70%程度を賄っている稀有なメゾンだが、それでもNVのCollectionには、一部、栽培農家からブドウを購入する必要がある。Collectionの品質を最高のものにするためには、買いブドウの品質管理、そして栽培農家との関係構築が鍵となる。