シャンパーニュの進化 ルイ・ロデレールの「Collection」とは

Louis Roedererの醸造家チーム


「きっかけは2017年の収穫でした」とレカイヨン氏は振り返る。

この年は、筆者も収穫時期に現地を訪問したが、収穫中にも雨が降る困難な年だった。レカイヨン氏は、「チャレンジが多い年でした。買いブドウについても、最良のものを得るためには、ブドウ栽培農家との一層の協力体制が大事だと痛感しました」と語る。

翌2018年から、レカイヨン氏は組織の体制を大幅に見直し、自分の信頼する右腕の醸造家を、新たに買いブドウの担当者として配置。買いブドウの品質向上についても根本から改革した。栽培農家とより緊密な関係を構築し、よりよい畑作りのためのサポートを行い、収穫する時期も一緒に決定する。すべては、最良のブドウを得るためだ。

こうしてできたCollectionは、160種類ものワインのブレンドにより創作されているが、一つ一つのワインは、それぞれの土地の個性を表したワインだという。レカイヨン氏は、「各土地の個性、その年のアイデンティティを反映した、その年に造り得る最善のブレンドを創ることが目標」だと熱を込める。

時代に合わせたモダンなスタイルへ


時代とともに、ワインの飲み手の嗜好にも変化がある。特に若い世代は、これまでとは違ったスタイルのワインを求めることもあるだろう。シャンパーニュの楽しみ方も、アペリティフとしてだけではなく、食事と合わせて楽しめるものを求める人もいる。

ワインの選び方・選ばれ方も、インターネットやソーシャル・メディアの普及により変化が起きている。生産者は自ら発信することで、飲み手に直接、タイムラグなく情報を提供することができるようになり、消費者も、自分から情報を入手し、味わいだけではなく、そのワインや生産者のストーリーなどをもとに、自分が共感するワインを選択することができる。



2021年に新しくリリースされた、ルイ・ロデレールのCollectionには、「242」の数字がラベルに記載されている。これは、1776年の設立以来、242回目のブレンドであることを示す。翌年リリース予定の次作Collectionは「243」となる。これにより、ラベルからも、各ボトルがどのエディションなのかが一目で分かる。


裏ラベルにも情報がたくさん記載されているが、専用アプリをダウンロードし、スマホでボトル裏のQRコードを読み込むことにより、そのワインの詳細な情報を取得することができる

Collection 242は、華やかで、柑橘、リンゴのコンポート、レモンタルトといったフレーバーがある。時間の経過とともに、ハチミツのような甘い香りも立ち込める。成熟した果実味とリッチさの中にも、フレッシュ感があり、ガストロノミックな料理にも合う深みがある。開けてすぐに美味しく味わえるワインに仕上がっている。

レカイヨン氏は、「包み込むような、優しく柔らかい口当たりにこだわりました。若干の塩味がある、力強く長い余韻で、今飲んでも美味しいですし、熟成させてからも楽しめるワインです」と笑顔で説明する。

そうして1本1本への情熱は強いが、「人によって好みが違ってよいのです」とも言う。「毎年異なる作品を送り出すことで、同じCollectionであっても、年による違いや変化も楽しんでほしい」


ブレンドの構成要素となるベースワインを試飲することで、各ワインができる畑・土地の個性を捉えることができる

ワインは、楽しむものであり、自分の好みに合ったものを美味しく飲むのが一番だ。その上で、各ワインに込められた背景事情やストーリーを知ると、ワインはもっと面白くなる。このワインコラムでは、そういった情報を発信し続けたい。

島 悠里の「ブドウ一粒に込められた思い~グローバル・ワイン講座」
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文、写真=島悠里

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