ビジネス

2021.12.07

就任直後に最大の危機。4代目社長が食品乾燥機で拓いた存続の道

木原製作所 木原康博社長


──その後は、会社の立て直しを目指して本格的に始動しますね。「どん底」期からどのように業績を伸ばしていったのですか。

食品乾燥機という新事業を拡大していくためには、まずは広く認知してもらう必要があると考え、さまざまなコンテストに応募しました。それまで農家さん回りがほとんどで、企業訪問が不慣れな営業部員にとっても、受賞実績があればセールスしやすくなるんじゃないかと思って。

そのなかで、2010年「優秀省エネルギー機器表彰」を受賞。従来乾燥機比で7割削減という弊社製品の燃費の良さを評価していただいたんです。(転機③)

また、これも弊社製品の売りである、香りを損なわないように食品をじっくりと乾燥させていく温湿度管理技術を知ってもらうきっかけとなりました。

いままでやってきたことは間違いじゃなかったと自信を取り戻しましたし、会社にも弾みがつきましたね。その頃から売上も少しずつ戻ってきて、当時は干しシイタケだけだった乾燥食品のレパートリーもどんどん増やしていきました。


食品乾燥機

──今後はどんなことに挑戦していきたいですか。

食品乾燥機事業の多角化を図っていきたい。例えば、更に高度化させた弊社製品を大手の食品会社の研究機関や生産現場で使ってもらえたらいいなと。

実は、いままで農産品を中心に取り扱ってきたぶん、水産品に関してはそこまで多くの実績が無いんです。水産品は衛生面の関係から冷風乾燥がスタンダードだったんですが、実は温風乾燥の方が安上がりだし、乾燥日数も4分の1で済む。ただ、従来の乾燥機の技術力の問題で、それが実現されてこなかった。

それでも、私たちなら出来るだろうということで、いまはこの水産品の乾燥機に目を付けています。タバコ乾燥機でこれまで培ってきた技術を生かして、水産業という新しい市場も開拓していきたいですね。もちろん、海外をターゲットにした挑戦も考えています。


木原康博(きはら・やすひろ)◎1977年、山口県山口市生まれ。カリフォルニア大学バークレー校のビジネススクールでプロジェクトマネジメントとマーケティングを修了した後、1902年(明治35年)創業のタバコ乾燥機メーカー、木原製作所に4代目として入社。営業部、取締役社長室長等を経て、2008年に代表取締役社長に就任。その後は食品乾燥機事業に力を入れ、2010年には「優秀省エネルギー機器表彰」を受賞。

文=島田早紀 編集=松崎美和子

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