阪大のカンニングペーパーがすごい。成功に必要なのは「要約」だった

大阪大学「日本国憲法」の講義試験で実際に使われた「カンニングペーパー」

11学部・16研究科を擁する国立文理総合大学、大阪大学。いわゆる第二次大戦前の「旧帝国大学」のひとつで、最難関の国立大学群に含まれる。

この名門大学に、2005年から10年以上続いた伝説の講義があった。「日本国憲法」だ。

金曜の1限、午前8時50分という開始時間にかかわらず学生たちを釘付けにし、300人以上の大講義室が毎回満員になった。人気の秘密の1つは、冒頭10分間、深夜のラジオさながらに「DJマユミの恋愛相談」のコーナーを設けたことだった(参考:「一限目でも欠席なし。阪大・伝説の恋愛講義「冒頭10分の秘密」とは」)。

その伝説の講義を担当したのが、法学者の谷口真由美氏だ。東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗前会長から、「『わきまえていない』女」とも解釈できる発言があった、日本ラグビーフットボール協会の元理事としても知られる。

ふつう、大学では授業の概要を、大学公式の「シラバス」にまとめる。実は大阪大学ではそれとは別に、学生たちが自主的に各授業や教授について評価をグラフ化した非公式の「クロバス」なるものが1冊1000円で売られている。谷口氏の授業は、クロバスでは「お笑い」に満点がついていた。

実は谷口氏は「DJマユミの恋愛相談」のほかに、「日本国憲法」の講義であるユニークな施策を実装していた。試験の際、カンニングペーパーの持ち込みを許可していたのである。「A4の用紙1枚になんでも書いてきてよし」というものだった。

谷口氏に、学生から公開の許可を得たカンニングペーパーを紹介してもらい、「カンペ持ち込みOK」にした理由を聞いた。

ベストセラー著書『おっさんの掟』でも話題、TBS「サンデーモーニング」を始めテレビへの出演も多い人気プレゼンターである谷口氏の武器ともいえる講義(プレゼン)の極意、講演会で聴衆を引きつける秘訣とは何なのか。

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「カンニングペーパー持ち込み可」は学生たちにはどんな反響があったか


実は大多数の人は、一生に一度くらい、カンニングペーパーを「作った」ことはあるのではないでしょうか。

掌とか定規の裏とかシャーペンのノックする「頭」の部分とか、消しゴムの面とかを使って。冬だと、袖の中にいれこんだり。

カンニングペーパーを「持ち込み可」にしたのは、学生に講義の要点をレビューし、まとめさせるためです。そしてもくろみ通り、できあがったカンニングペーパーはそれぞれの頭の中を見事に映していました。さながら「小宇宙」のように。

さすが阪大生、適切にまとめている子のカンニングペーパーは美しい。私はそれらを収集していたのですが、中には「頑張って作った力作なので返してください」と言う学生もいたので、コピーを取って返却したものもあります。

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法学者の谷口真由美氏、その発言は実に率直でユニークだ

ちなみに阪大の「裏シラバス」ともいうべきクロバスの、私の授業のところには「カンペ持ち込み可」と書いてありました。受講した時点で知っている学生も多かったけれど、知らない学生は最初ギョっとしてから爆笑していましたね。
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文=石井節子

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