また、この10年間にTTSと診断された人を男女別、3つの年齢グループ別(50歳未満、50〜74歳、75歳以上)に分け、年間の入院患者100万人あたりの診断数を比較したところ、いずれにおいても増加していたことが分かった。
最も大幅に増えていたのは、50~74歳の女性。次いで増加幅が大きかったのが、75歳以上の女性、50~74歳の男性だった。
患者が増える原因は?
TTSと診断される人が増えている理由のひとつには、この病気に対する認識が高まったこともあるだろう。2005年に医学誌ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシンに論文が発表されるまで、「ブロークンハート症候群」は、ほとんど注目されていなかった。それまでにTTSを発症した人の多くには、何か他の診断名がつけられていたと考えられる。
ただ、TTSの発症率は、実質的に増加している可能性がある。社会全体において、TTSを起こすような感情的なストレスは増え続け、それに対応する能力は低下し続けているのかもしれない。
1980年代の初め以来、メンタルヘルスに関する指標はその多くが、良くない方向に進んでいる。それを考えれば、こうした結果は驚くべきものではないともいえるだろう。孤独を感じる人も、年々増加している。
一方、TTSの発症率に男女差がある原因については、特定するためのさらなる研究が必要だろう。社会が女性に期待すること、社会のシステムが、男性よりも女性に対し、より大きな圧力をかけているのかもしれない。
また、TTSを発症する人が全般的に増加している原因、増加を抑えるために取るべき対策についても、特定するための調査が必要だ。「ブロークンハート」症候群の患者の増加は、私たちを取り巻くシステムには本当に変更が必要であることを知らせる、もうひとつの警鐘なのかもしれない。