住宅の修繕やリフォーム用品の販売最大手であるホーム・デポは2021年11月16日、ウォール街をあっと言わせた。2021年第3四半期の決算発表で、並外れた売上高と利益を達成したことを明らかにしたのだ。
さらに重要なことに、同社はこの発表で、米国経済全体に向け強いメッセージを発信した。それは、パンデミックに起因して始まった住宅の修繕やリフォームのブームは、まだまだ続いているというメッセージだ。
ホーム・デポの業績のすごさを説明しよう。総売上高は10%近くアップした368億ドルで、アナリストが予想した350億ドルを上回った。純利益はさらに驚きで、20.3%増の41億ドル。1株当たりの利益に換算すると3ドル92セントとなる。既存店ベースの売上は6.1%も増加し、これもウォール街が予想した1.4%をはるかに超えた。
予想を下回る結果になったのは、5.5%減となった総取引件数(total transactions)のみだ。これは、新型コロナウイルスの感染が拡大して外出自粛が盛んに呼びかけられていた1年前と比べて、現在進行中の住宅修繕やリフォームの件数が減っていることを示すものだ。それでも、平均購入額は13%近くも増加しており、その減少分を補って余りあるほどだ。
住宅関連分野全体では、ここ15カ月から18カ月にかけて驚異的な業績が達成されているが、不安材料もある。人々が再び外出するようになったことで、住宅のリフォームや模様替えにかける出費を減らし、浮いた予算を、旅行や娯楽など、家の外での出費へと振り替える可能性があることだ。
住宅やインテリア関連商品に特化したウェイフェアやベッド・バス&ビヨンド(Bed Bath & Beyond)などの小売店も先ごろ、それぞれ四半期決算を発表したが、期待外れの内容だった。両社によると、その一因には少なくとも、住宅関連商品の消費落ち込みがあるようだ。
しかし、ホーム・デポはそうした問題を抱えていない。そして人々の関心は、ホーム・デポの主要ライバルであるロウズが、どのような第3四半期決算発表を行うかに注がれていた。住宅リフォームと家電のチェーンであるロウズは、ホーム・デポより事業規模は小さいが、ここ1年はいくつかの指標でしばしばホーム・デポを出し抜いてきた。ただし、ロウズはホーム・デポとは異なり、業者向けというよりも、DIYを楽しむ消費者への依存度が高いと考えられている。
ホーム・デポのクレイグ・メネア(Craig Menear)最高経営責任者(CEO)は今回の決算発表で、「住宅の修繕やリフォームの需要が大きい状態が続いている」と述べた。また、興味深いことに、良好な業績の足を引っ張り得るサプライチェーンやインフレの問題については、特に警戒する言及はなかった。
ウォール街は、同社の決算発表を全面的に支持した。決算発表当日の11月16日朝に取引が開始すると、ホーム・デポ株は値上がりし、上昇率が4%を超えたのだ。ロウズも同様で、取引が始まると、上昇率が3%をほんの少し上回った。
米国ではようやく、人々が長い冬眠から覚めつつあると言えるだろう。しかし、消費者は引き続き、住宅にかける予算を優先させているようだ。