バイデン大統領に米国で会いたいのに 門前で待ったがかかった岸田総理

バイデン米大統領(Photo by Samuel Corum/Getty Images)


もちろん、方法はある。バイデン政権が納得する「成果」を挙げればいい。さしあたっては日米が本来、年内開催を目指していた外務・防衛閣僚協議(2プラス2)を「利用」しない手はない。日米両政府は間もなく、2プラス2の共同声明案についての具体的な調整作業に入る。今のところ、日本の国家安全保障戦略の改定が終わっていないため、2019年に失効した米ロの中距離核戦力(INF)全廃条約に代わる、米中距離ミサイルの配備問題などには触れない見通しだ。ただ、中国の弾道ミサイル増強に対抗して、日米両政府が従来、その必要性を唱えていた「flexibility(柔軟性)」や「resiliency(復元力)」などの概念には触れそうだ。おそらく、米軍と自衛隊による基地の相互利用や、航空機を攻撃から守る施設(掩体)の補強など、地味だが非常に重要な動きも含まれるだろう。

岸田政権は来年1月4日から28日まで米ニューヨークの国連本部で開かれるNPT(核拡散防止条約)再検討会議に林芳正外相を派遣するだろう。岸田首相は常々、核軍縮政策に強い意欲を示してきたからだ。林外相はNY訪問の機会にワシントンまで足を伸ばし、岸信夫防衛相と合流して日米2プラス2に臨むつもりなのだろう。その後、岸田首相が訪米し、バイデン大統領との会談で2プラス2の成果を再確認しようと提案すれば、対中国政策に熱心な米国は大喜びで応じるだろう。「それでは、通常国会が始まってしまう。そうなれば国会対応で忙しいから、米国に行けないではないか」ということなのかもしれない。でも、政策を重視するなら、このやり方が自然な流れだろう。

岸田政権も総選挙で勝利したものの、これから新型コロナウイルスの感染拡大が再び始まれば、支持率が徐々に削られていくかもしれない。自民党総裁選の決選投票では支持してくれたとはいえ、安倍晋三元首相がどこまで岸田首相を支えるのかも定かではない。来年夏には参院選も控えている。自民党は16年夏の参院選で大勝しており、来夏の参院選での議席維持のハードルは高い。参院選で敗北すれば、政権が一気に傾く可能性もある。こうした不安が一層、「一日も早く訪米し、外交に強い岸田政権をアピールしなければ」という焦りにつながっているのかもしれない。

今の時代、ふらふらになり、自分ファーストを繰り返す米国の姿は、珍しいものではない。欧州でも、米国を世界の良きリーダーだとみる人の数は減っている。単純に米大統領と握手する姿だけをみて、「日本の首相はすごい」と感じる日本人がどれだけいるだろうか。重要なのは成果であって、記念写真ではない。

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文=牧野愛博

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