「リベンジ消費」で多忙なのに、株価が戻らない業種

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19日金曜日の夜に東京・銀座へ足を運ぶ機会があった。「近くの道路はどこも交通量が多く、混雑している」。街角ではこんな声を耳にした。内閣官房の新型コロナウイルス等感染症対策推進室が公表するデータによると、同日午後9時台の東京メトロ・銀座駅の人出は最初の緊急事態宣言が東京などに発出された昨年4月7日に比べると205.7%の増加。つまり、3倍あまりに達した。

感染拡大前は下回るものの、前週12日金曜日との比較でも約11%増。「サラリーマンの聖地」、東京・新橋にある店にも夜遅くまで明かりが灯る。感染者数の減少に伴い、繁華街に週末のにぎわいが戻り始めているのは間違いなさそうだ。

日本の株式市場でも経済活動の正常化による恩恵を享受できそうなリベンジ消費・リオープン(経済再開)関連銘柄への先高期待が膨らむ。そこで、「居酒屋を運営する会社の株価も動意づいているのではないか」と調べてみたところ、さにあらず。9月30日の緊急事態宣言解除以降、むしろ足踏み状態となっているのだ。

19日時点の日経平均株価は9月30日終値との比較で1%上昇。東証1部全体の値動きを示す東証株価指数(TOPIX)も同0.7%のプラスといずれも小幅ながら値上がりしている。これに対して、居酒屋関連の主要17社(時価総額100億円以上)のうち、同期間に株価が上昇しているのは3社にとどまる。

居酒屋の『磯丸水産』を展開するSFPホールディングスを傘下に置くクリエイト・レストランツ・ホールディングスは同29.5%下落。ワタミは同20.7%、鳥貴族ホールディングスは同15.6%それぞれ値下がりするなど、多くの銘柄が軟調な推移を余儀なくされている。

なぜ、上値が重いのか。市場関係者は「感染第6波への警戒感がある」(国内証券のストラテジスト)と口をそろえる。欧米では再び、感染者数が急増しているだけに慎重にならざるをえない面はあるだろう。

「生活様式が変わってしまった」(同)との指摘も少なくない。「自粛期間中に深夜まで酒を飲む習慣がなくなったことで、肝臓の数値が劇的に改善した」との話を最近、しばしば耳にする。コロナ禍で一極集中の進んでいた東京から脱出し、郊外に住まいを移すなどの動きも徐々に広がってきた。そうなると、「仕事帰りにちょっと一献」という習慣も見直されるのだろう。リベンジ消費に対する過大な期待は禁物だ。
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文=松崎泰弘

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