もう一つ驚くのは、ハンドリングと乗り心地の向上。今回は新しいプラットフォームに新しいダンパーシステムとスタビラーザーが搭載されたことで、コーナーではボディロールが抑えられて安定した姿勢を見せるし、先代よりも路面のウネリをしっかりと吸収してくれるので、キャビンには伝わらない。今回の試乗ではオフロードには行けなかったけど、今までのランドクルーザーによる悪路でも文句なしのハンドリングには、その新しい骨格・ダンパー・スタビが組み合わせてあるので、オフロードではとんでもない走行性能が実現できるはず。悪路向けのドライブモードセレクター「マルチ・テレインセレクト」は、副変速機がローレンジで走行するだけでなく、ハイレンジのときにも利用できるように改良されている。またシステムが自動で走行特性を調整する「AUTO」モードが追加された。
外観デザインは、先代のプロポーションをキープしているけど、グリルはより存在感を増している。と同時に、スクエアなニュアンスが強調していて、エッジをより効かせている。不思議なことに、今回のランドクルーザーは、まるでレクサスから学んだかのように、より高級感と品が増している感じがする。なぜかアメリカでは300系は販売されないにしても、そのノーズ部分はアメリカ人が好むような巨大な顔で、自分のルームミラーに後ろのランドクルーザーが映ったら、すぐによけたくなるに違いない。
室内はどうだろう。冒頭で書いたように、同車は盗難の標的になりがちなので、今回は新たにスタートスイッチに指紋認証機能が採用された。さらに操作しやすい9インチのタッチスクリーンとパノラミックビューモニターが全車標準。5人乗りと7人乗りのバージョンがあるけど、僕が特に気に入ったのは、7人乗りの3列目シートのパワーアシスト機能。2列目のシートのボタンを押すと、ラゲージスペースの床からビヨーンとシートの背が上がってくると同時に、シートの座の部分はまるで舌のように出っ張ってきてしっかりとしたシートを実現させる。残念なのは、3列目は足を置くスペースがほとんどないので、子どもしか座れないけどね。
半導体と部品の不足がランドクルーザーの供給の問題に影響しているけど、その大変な人気ぶりも納期の遅れの原因にもなっているようだ。しかし、価格があまり変わらないガソリンとディーゼルのどっちにするかが難しい。ディーゼル仕様が760万円からで、ガソリン仕様は730万円からになっているので、選択は自分がどういう使い方をするかによって決まるだろう。良くオフロードに行くようだったら、低中速で力強いトルク感を持つディーゼルが良いだろうし、市街地で乗る人はガソリンがよりベターではないか。とにかくランドクルーザーの人気市場のオーストラリアでは、6割の農場主は間違いなく乗り換えるはずだ。
国際モータージャーナリスト、ピーターライオンの連載
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