谷本:では、日本、或いは日本人のDNAと、それを活かしたグローバリゼーションについて渥美さんの見解を詳しく紐解いていただけますか?
渥美:それは一万年以上続いた縄文時代に私たちのDNAに刷り込まれた日本固有の「自然の摂理」に従った価値観だと思うんです。たとえば「神道」はモノ作りを「科学」と捉えず、「製造は創造」の意識のもと、モノに作り手の魂を吹き込みます。世界全体は肉眼では捉えることはできない。だからこそ、「心眼」で捉える必要があり、グローバルな世界は「全体として一つ」という「般若心経」と共通している面があると思います。
たとえば「もののあわれ」「わび・さび」と言う日本が歴史の中で培ってきた独特の美意識は世界にも通用するもので、これから先も世界全体で都市化やIT化がますます進む中で「心の息抜き」や「人間性」の象徴として、装飾的に使われるということも考えられます。私たち日本人は日本で生まれ育ち、教育を受け、仕事をすることで、無意識のうちに日本の現実を受けとめるのにちょうど良い「日本サイズの心」を育んでしまっている。
でも、世界全体を受け止めるには「最大スケールの心の器 グローバル・マインド」を身に付けることが不可欠です。日本独特の倫理を兼ね備えた「独創性」の上に、真の意味での「グローバリゼーション」が加われば、まさに鬼に金棒! 「日本の倫理に則した」日本発のグローバル教育を世界に向けて発信し、日本からも数多くの優秀なグローバル人材を世界に送り出すことができるのではないかと思っています。
谷本:渥美さんが考える理想のグローバル人材を一言で言い当てていただけますか?
渥美:「世界目線<自国+地球+宇宙>を心のインフラとし、地球上で生きる全ての生命が平和でクリエイティブに生きる未来づくりに貢献できる人材」を私は敢えて「真のグローバル人材」と呼びたいと思います。
谷本:それから今「倫理」とおっしゃいましたが、日本では「倫理」と「道徳」がともすれば「同義語」として捕らえられているように思いますが、そもそも「倫理」と「道徳」の定義について、渥美さんの見解を少しわかりやすく説明していただけますか?
渥美:敢えて言うなら、倫理は「時代や環境を越えて、人間として何が正しいかを定義する原理・原則(Principle)」そして、道徳は「それぞれの時代や環境下で何が徳性なのかを定義する標準(Standard)」だと思います。ですから「倫理」と「道徳」の二者は分けて考えられるべきものです。