1976年米国の五大湖周辺大学協会からPoet-in-residenceとして招かれ、当時台頭していた新しい自我に目覚めたアメリカの女性詩人たち15人にインタビュー、うちひとり、Adrian Rich が日本に追ってきたときNHKのためにインタビューをした時の写真
谷本:渥美さんが起業なさった1983年、つまり今から約40年前はまだ日本人女性がアメリカで起業することは珍しい時代だったと思いますが、「デュポン」「IBM」「ユナイテッド・テクノロジーズ・コーポレーション(UTC)」といった米国の大企業を顧客にして、米国のみならず世界中を駆け回るようなビジネスに発展させたと伺っています。その成功の背景についてお話しいただけますか?
渥美:企業としてスタートしたからには、とにかく新規の顧客開拓をしていかなければならない。そしてある日ボストンの下町に足を運んだとき、無料情報誌のイベントページが目に留まった私は、ふとそのフリー誌にイベント案内を出して見ようと思いついたんです。そして、どうせやるならアメリカ人(企業)が関心を持ちそうなものが良いと考え、「日本セミナーシリーズ~相撲と日本の意思決定システム~米国とどう違うか徹底討論」というテーマを掲げたセミナーを試験的に開催してみました。
さらに、その後も日本の芸術やスポーツと経営を組み合わせたテーマをもとに、続編セミナーを開催していくうちに、その評判を耳にしたというタイム誌の記者から突然取材依頼の電話が入り、1985年春「重役室の禅」というタイトルの記事が紹介されることになったのですが、その反響は驚くべきものでした。
今思えば、「外国とビジネスをする際に生じる様々な問題を、文化まで掘り下げて解決しようとする異文化マネジメントの必要性があったにも関わらず、そういうサービスを提供する会社が存在していなかった」ということで、あの当時の時代の流れが米国で企業を経営する上で大きな後ろ盾になっていたのは確かだと思います。
谷本:研修や講演などさまざまな機会を通して、世界共通の「時間軸」「空間軸」「価値軸」を共有する必要性を唱えていらっしゃいますが、 何故「3軸」なのか、そして何故その必要性に迫られているのか、さらに詳しくお話を伺えますか?
渥美:まず「時間軸」X「空間軸」の広大なプラットフォームを心に設定し、世界中の人たちとコミュニケーションを図る土台を持つということが重要な課題になると思います。さらに「価値軸」は、自分や自国のアイデンティティや主張の核心となる、一番重要な「軸」だと思います。
古くから日本に伝わる「そろばん」に例えると「時間軸」と「空間軸」は全球アカバス(そろばん)の枠組みで「価値軸」はそろばんの玉に当たるといえます。どこの国に生れても、これらの3つの軸をしっかりと認識して、世界を正しい遠近法でとらえる「グローバル能力」を備えることで、今人類が直面している「地球温暖化問題」の解決をはじめ、現在地球上で起きている多岐に渡る問題の軌道修正ができるのではないかと思っています。