“三方よしの経営”の先にある、サステナブル企業
このニュースを受けて、感じたのは、日本のビジネススタイル“三方よしの経営”です。私は、歴史小説が好きでよく読んでいるのですが、古来から日本の近江商人が実践してきた、“三方よし”の商売とは、2019年にビジネスラウンドテーブルが発表した“株主至上主義からの脱却”の先掛けなのではないかと思いました。つまり、日本では、当たり前に根付いてきたビジネスモデルだったのです。
これは、日本的な経営の価値観を世界が認識した出来事でしたが、日本では当たり前すぎて、2019年のビジネスラウンドテーブルの声明は、国内でほとんどニュースになりませんでした。これは、経営者にとって、グローバルなビジネスを考える上で、大きな意味のある出来事だったといえます。
1000年続く長寿企業が存在する3つの理由
今、さかんに世界では、“サステナブル”という言葉が使われていますが、日本では“長寿企業”と呼んだ方が分かりやすく浸透しているかもしれません。1000年以上続く企業が存在するのは、日本だけです。その7~8社ある長寿企業は、温泉宿であったり、華道・池坊流であったり、建設会社であったりします。そこで、疑問が生じると思います。「なぜ、長く続くのだろう?」と。
その理由は、とてもシンプルで、1.三方よしの発想 2.ビジョンやミッション、理念が明確である 3.お客さまや地域、社員との“絆”が強い、という3点だと分析しています。
企業ではありませんが、お寺や神社の多くが何百年も続いているのは、歴史を重ねても理念や存在理由がぶれる事なく明確で、地域や社会との“絆”ができているからです。
理念と経済性の両立を“マーケティング”で取り入れる
持続可能な経営に欠かせないのが、マーケティングを取り入れる事だと思うのですが、私は、「マーケティングとはリーダーシップである」と意味付けています。「これをやれば、もっとよくなりますよ。よい人生が待っていますよ」と、お客さまをよりよい未来に導くことが、ここでいうリーダーシップです。
製品スペックさえ良ければ売れていた時代もありましたが、これからは、商品とサービスに“感情的価値”を言語化して、お客さまをよりよい未来に導く仕組みを構築することが、重要な成功要因となりました。今までのままの“売上”だけを追い求める経営では駄目だと、世界中の皆が気づき始め、「お金だけを追いかけては駄目だ」ということが分かってきたのだと思います。
12月には、持続可能な経営についての本を出版することにしました。理念と経済性の両立を、いかに強く永く続けていけるのかが、“働く幸せ”を実感できる、新しい“持続可能なビジネスモデル”につながるのではないでしょうか。