ラグビー界のアイコン、五郎丸が語る「ラグビー」と「ビジネス」の共通点とは

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一度きりの人生、失敗を恐れずチャレンジを!



Photo by Alexandre Dimou/Icon Sport via Getty Images

──ラグビーを続けていくと、「どのようなスキル」が身に付くと考えますか。

ラグビーが非常に面白い点は、前にパスをしてはいけないルールだという事です。前に走りながら、後ろにパスしなくてはいけない。つまり、ボールを持っている人は、後ろで何が起きているか見えないわけです。となると、まわりの選手がボールを持っている人に情報を与えなくてはいけない。すると、ボールを持って走る人が情報を感じ取ったうえで、次の行為に繋がるパスをする。これは他のスポーツにはない事で、ラグビーは味方が全て後ろにいるんです。よって、見えない味方との「コミュニケーション能力を高めるスキル」が自然と高まります。

──今、伝えたい事をお聞かせ下さい。

ずっと長くプレイヤーだった時代からひと区切り置いて、ビジネスという全く違う畑に飛び込んだわけですが、自分が意志を持ってここに来たので、とても楽しいです。沢山の気付きが新鮮な日々で。そこで、声を大にして伝えたいのは、「自分自身をしっかり持ち、チャレンジし続けていく喜びを見つけて欲しい」事。人間は生きる時間が限られているので、その限られた時間の中で、他人からチャレンジさせられるのではなく、自分の意志でチャレンジしているんだ、というポジティブな心持ちを持ち続けて欲しい。短絡的に、成功とか失敗といった結果に捉われなくてもいいと思います。一度きりの人生ですので!

──最後に。ラグビーと経営との親和性を通して、セカンドキャリアを築いていく為に必要な事とは?

キャリアを積んできた人は、これまでの栄光があった分、セカンドキャリアでの失敗を恐れる傾向があるでしょう。でも、そういった失敗に左右されずに、新人のような気持ちで「失敗しながらも這い上がってくる力」が大切だと考えます。そういう意味でも、これからどんどんアスリートから経営者が増えていったら、面白い社会が生まれるのではないでしょうか。



Forbes JAPANでは今夏より、「インクルーシブ・キャピタリズム」をテーマに掲げている。コロナ禍で社会の不条理にますます敏感になる中、ビジネスに「インクルーシブ」という概念を入れていかないと、企業も社会もビジネスも立ち行かなくなっている。

スポーツビジネスも、年齢性別、過去の実績や立場などにとらわれずに、多彩な経営者や起業家がアクセスする、よりインクルーシブな産業になることで強い成長を目指していく──。五郎丸氏のような意志を持ったアスリートがきっとそんな未来を切り拓いてくれることだろう。競技で培ってきた能力を活かしながらクラブ経営者への道を歩む氏の姿を今後も追っていきたい。


五郎丸 歩◎1986年福岡県生まれ。3歳からラグビーを始め、早稲田大学スポーツ科学部スポーツ文化学科在学中は、フルバック(FB)のレギュラー選手として活躍し、全国大学選手権で優勝を経験。2015年ワールドカップ日本代表に出場し、輝かしい成績を残し、キック時のポーズが「五郎丸ポーズ」と話題を集め、2015年の新語・流行語大賞にノミネートされるなど、一躍人気を博す。2021年のシーズン終了をもって現役引退。2021年7月より日本ラグビー界初のプロクラブ「静岡ブルーレヴズ」のCRO(クラブ・リレーションズ・オフィサー)を務める。

インタビュー・編集=谷本有香 文=中村麻美 企画コーディネート=宇藤智子

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