ビジネス

2021.11.18

「起業ストーリー」こそ、スタートアップの最強の武器

自社の製品・サービスを、どうやったら多くの人に知ってもらえるか。広告費や営業に割ける人員に制約のある中小企業やスタートアップ企業にとっては、特に悩ましい課題だろう。

ところが、広告費をほとんどかけず、売り込みのような「プッシュ型営業」をすることもなく成功しているスタートアップ企業がある。1on1(上司と部下が1対1で行う対話)の支援ツールを提供するKAKEAI(カケアイ)だ。同社は、PRを活用することで、日本を代表する大手企業から次々と受注している。

KAKEAIの特徴は、メンバーが面談の前に、話したい「トピック」と「マネージャーに求める対応」を選べること。「具体的なアドバイスがほしい」「一緒に考えて欲しい」「話をきいてほしい」など、その面談の目的がクリアになるため、双方にとってストレスが減る。

また、マネージャーには月に1度、「1on1の満足度」や「トピックごとの対応の仕方の得意・苦手」に関するフィードバックが送られるため、使うほどに面談の質を高めていくことができる。

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KAKEAIのフィードバック画面

2019年には、世界最大級のHR techイベント「HR Technology Conference」で、日本企業としては初めて「世界のHR techスタートアップ30社」に選出。すでに富士通、伊藤忠、朝日新聞などおよそ50社での導入実績があり、数十万人もの従業員が利用している。

起業家だけに許された「最強の武器」


KAKEAIの本田英貴社長は、まだ顧客が1社もいない2018年の創業直後の段階からPRを重視してきた。

「良いものを作っているという絶対的な自信はありました。ですが、いくら良いものを作っても、知ってもらわなくては始まらないですから」

本田社長が最初に取り組んだのが、自身の“起業ストーリー”の作成だった。それは、自身の失敗のストーリーでもあった。

筑波大学在学中には陸上部で活躍し、卒業後リクルートに入社した本田社長は、「最速ペース」で管理職に昇進するという、まさに順風満帆なキャリアを歩んできた。たが、管理職として成果をあげようと焦るあまり、やる気が空回りした。

「なんでこんな簡単なこともできないのか」と、部下にも辛く当たるようになってしまったという。職場の雰囲気は悪くなり、そのことに対しても苛立ちを隠せなくなる。まさに悪循環だった。
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文=下矢一良 編集=田中友梨

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