レスリー・キーに聞く。D&Iは本当に日本で根付くのか?


時間をかけて丁寧に理解する日本人


──日本では近年、SDGsやダイバーシティ&インクルージョンといった言葉が聞かれるようになった。ただ、現実の社会にはまだ無意識の差別がある。D&Iの実現は単なるスローガンに過ぎないのではないか。

日本人は、新しい概念を理解するのに、どこの国の人たちよりも時間がかかる(民族だ)と思う。真面目がゆえに、考えることにすごく時間がかかる文化だから。でも、逆に他の国の人ようにわかったフリはしない。

他の国の人は(新しい文化をすぐに)理解したように振る舞う傾向があるものの、その実、浸透していないと感じることも多い。今はまだ理解が浅いかもしれないけれど、長い時間をかければ、日本人は丁寧に理解してくれる。

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一方で、日本人は、他国の人に対して無意識な差別意識を持っているのも事実。主な情報源だったテレビのコンテンツも基本的には日本語しかなかったので、無理からぬことかなとは思う。今はインターネットのおかげで世界中のコンテンツに触れられる時代。SNSなどでも様々な考え方に触れられるようになり、この10年で人々の考え方も少しずつ変わっている印象だ。

SNSでの発信など、言葉の力によってダイバーシティの考え方が広まっていくことは間違いなく、その広まりは誰にも止めることができない。

大きなムーブメントにするには


──かつてレスリーさんがロバート・メイプルソープの写真集を海外から持ち込もうとした際、税関でその写真集が“猥褻”と判断され、最高裁まで持ち込まれた事件があった。また自身が男性ヌードを撮影する点についても、“猥褻”と判断されるケースがある。この点はどのように考えているか。

セクシュアリティの基準において、日本は世界からズレている。女性のヌードは(程度の差はあれ)問題ないにも関わらず、男性のヌードにはアクセプタンス(受容)がない。アメリカも許可されるようになってまだ20年だが、日本も生まれ変わって欲しい。
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文=松永裕司(Forbes JAPAN オフィシャルコラムニスト)

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