守りを軸とした過酷な試合で全力を出し切った、この選手の健闘は讃えたいが、世界のトップレベルのフォワードは、炎天下、前後半90分、延長前後半30分を走り切り、最後のチャンスにゴール前にパスされた難しいボールを、見事に決める。その決定力が一流選手の条件であることは、たしかであろう。
実際、この試合では、後半からの出場ではあったが、スペインのフォワードは、延長終了5分前、日本守備陣の一瞬の隙を突き、決勝点を挙げた。
このように、どれほど優れた技術を持っていても、その技術を極限の状態で発揮できる基礎体力=肉体的スタミナを持っていなければ、一流の選手とは言えない。
これは、アスリートの世界では誰もが認める常識であるが、ひとたび目をビジネスプロフェッショナルの世界に向けると、この常識が存在していない。
すなわち、自戒を込めて述べるならば、ビジネスの世界でも、営業力や企画力などの技術を最大限に発揮するためには、相当な精神の基礎体力=知的スタミナが求められるにもかかわらず、そのスタミナを鍛えているビジネスパーソンは、決して多くない。
例えば、営業では、顧客の眼差しや表情、何気ない仕草から、その無言の声を感じ取ることが、最高の技術であるが、この技術を発揮するためには、実は、かなりの知的スタミナが求められる。
企画もしかり。企画とは「知の格闘技」と呼んでも良いほど、ぎりぎりの力で、アイデアを出す、企画を練り直すといった会議を続けることが基本であるが、2時間程度の会議でも、スタミナ切れになるビジネスパーソンは、決して少なくない。
そして、そうしたビジネスパーソンから聞こえてくるのは、「40歳を越えると、若い頃のスタミナは無い」といった、根拠の無い自己限定の言葉である。
では、なぜ、多くのビジネスパーソンの知的スタミナが、40歳前後をピークに落ちていくのか。その理由は、明確であろう。
日々の仕事で、知力の限界に挑戦することをしていないからである。常に70~80%程度の力で、仕事を「こなして」おり、ランニングに喩えて言えば、いつも「流して走っている」からである。