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田坂広志の「深き思索、静かな気づき」

東京オリンピック2020において、サッカー日本代表チームは、準決勝で、延長戦の末、惜しくもスペインに敗れたが、得点を期待されたフォワードの選手が、「守備に体力を取られ、シュートチャンスに力を出し切れなかった」との主旨の反省を述べていた。

守りを軸とした過酷な試合で全力を出し切った、この選手の健闘は讃えたいが、世界のトップレベルのフォワードは、炎天下、前後半90分、延長前後半30分を走り切り、最後のチャンスにゴール前にパスされた難しいボールを、見事に決める。その決定力が一流選手の条件であることは、たしかであろう。

実際、この試合では、後半からの出場ではあったが、スペインのフォワードは、延長終了5分前、日本守備陣の一瞬の隙を突き、決勝点を挙げた。

このように、どれほど優れた技術を持っていても、その技術を極限の状態で発揮できる基礎体力=肉体的スタミナを持っていなければ、一流の選手とは言えない。

これは、アスリートの世界では誰もが認める常識であるが、ひとたび目をビジネスプロフェッショナルの世界に向けると、この常識が存在していない。

すなわち、自戒を込めて述べるならば、ビジネスの世界でも、営業力や企画力などの技術を最大限に発揮するためには、相当な精神の基礎体力=知的スタミナが求められるにもかかわらず、そのスタミナを鍛えているビジネスパーソンは、決して多くない。

例えば、営業では、顧客の眼差しや表情、何気ない仕草から、その無言の声を感じ取ることが、最高の技術であるが、この技術を発揮するためには、実は、かなりの知的スタミナが求められる。

企画もしかり。企画とは「知の格闘技」と呼んでも良いほど、ぎりぎりの力で、アイデアを出す、企画を練り直すといった会議を続けることが基本であるが、2時間程度の会議でも、スタミナ切れになるビジネスパーソンは、決して少なくない。

そして、そうしたビジネスパーソンから聞こえてくるのは、「40歳を越えると、若い頃のスタミナは無い」といった、根拠の無い自己限定の言葉である。

では、なぜ、多くのビジネスパーソンの知的スタミナが、40歳前後をピークに落ちていくのか。その理由は、明確であろう。

日々の仕事で、知力の限界に挑戦することをしていないからである。常に70~80%程度の力で、仕事を「こなして」おり、ランニングに喩えて言えば、いつも「流して走っている」からである。

文=田坂広志

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